訪問介護の船賃を福岡市が補助 能古島、利用者の負担解消

西日本新聞 ふくおか都市圏版 下村 佳史

 福岡市は、西区・能古島で訪問介護サービスなどを行う島外からの事業者が自動車を使って島内を移動できるよう、自動車運賃を含む船賃の全額補助を始めた。船賃はこれまで利用者が支払い、重い負担となっていたが、「住み慣れた島で最期まで安心して暮らせるよう、補助を出してほしい」との島民たちの強い要望が実現した。島での訪問サービスの現状を追った。

 博多湾を望む島の高台にある1人暮らしの90歳の女性宅。2年前に体調を崩し、本土にある病院に2カ月入院した後、島に戻ってきた。亡夫と島ののどかな生活に憧れ、移住してきて40年になる。

 女性は高齢者の見守りをするボランティア活動の先頭に立ってきた。お年寄りの様子を見て回ったり、話し相手として寄り添ったりしながら生きてきた。さまざまな人とのつながりを築いてきた島を離れての生活は考えられなかった。

 ただ、退院後、島で再び1人暮らしを始めるには、ホームヘルパーの訪問サービスが必要だった。膝を悪くしているため、自宅から坂を下ったところにあるごみ集積所へのごみ出しができなかった。週1回、ヘルパーの訪問を受け、自宅の掃除のサービスも受ける。

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 福岡市での船賃の補助は、離島振興法対象地域の玄界島、小呂島(いずれも西区)で2000年度から始まった。市は補助金交付要綱を改め、昨年12月に施行。同法対象外の能古島でも補助を行うようになった。

 周囲が12キロあるこの島で事業者が効率的に訪問サービスを提供するには車が欠かせない。これまでは、長さ3~4メートルの車を1往復させるのに3140円の船賃がかかっていた。女性が利用する事業者は1回の渡航で2~3軒のサービスを行い、1軒当たりの船賃の負担を抑えていた。

 だが、本土にはない大きな出費が強いられるため、能古島で訪問サービスを受けるのは、介護予防や介護が必要と認定された約50人のうちこの女性らごく一部にとどまっていた。

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 訪問サービスを利用する女性の何よりの楽しみは、孫のような年齢のヘルパーと掃除の合間に交わす何げない会話だ。「新型コロナウイルスの影響で人と顔を合わせる機会が減る中、船賃の負担がなくなったことで、サービスを利用してみる人が増えると思います」

 受けることができて当然のサービスの利用が「船賃の壁」により、控えられていた能古島。能古校区自治協議会や民生委員などでつくる高齢者支援会議では5年前から、この問題の解消を求める声が出ていた。

 同自治協の福田唯夫会長は「利用者が多くなると、島でサービスを始める事業者も増えていき、高齢者が暮らしやすい環境が整っていく」と期待する。

 同島は人口約680人のうち、65歳以上が4割以上を占める。生活用品をそろえた店が2年前に廃業するなど、高齢者が安心して生活を送るための課題は少なくない。島の強みである地域コミュニティーを生かしながら、自助、共助、公助をうまく融合させた協働のまちづくりが求められている。

 (下村佳史)

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