コロナ禍と罰則 まず失政認め責任果たせ

西日本新聞 オピニオン面

 政府の対策は明らかに後手に回っている。事態は収束に向かうどころか深刻の度合いを深めている。責任を国民に転嫁し、私権を制限する法改正に走るのなら、本末転倒ではないか。

 新型コロナウイルスに対応した特別措置法のことだ。

 政府は、自治体が飲食店などに休業や時短営業の協力要請を行った場合の補償と、要請に応じない際の罰則をセットで設ける改正案作りを進めている。併せて、感染者が入院勧告を拒否すれば刑事罰を科す感染症法の改正も検討している。

 休業や時短に伴う補償を法に明記し、国の責任で行うことに異論はない。私たちはかねてその必要性を強く訴えてきた。自治体の財源は限られ、財政事情も地域ごとに異なる。このため自治体が協力要請に及び腰になったり、要請に伴う協力金の額や対象業種の範囲にばらつきが生じたりしているからだ。

 政府は昨年11月、コロナ対策の臨時交付金の中に「協力要請推進枠」を設けた。ただ活用には国との協議が必要で、自治体による機動的対応が可能なわけではない。こうした面も含め、協力要請に伴う補償の在り方を見直す法改正は急ぐべきだ。

 問題は罰則だ。特措法やこれに基づく政府の基本的対処方針は国民の権利制限を必要最小限にとどめる、としている。感染症法にも人権の尊重が明記してある。罰則導入にはあくまで慎重であるべきだ。野党の立憲民主党などは「罰則よりまずは十分な補償を」と訴えている。それがあれば多くの場合、協力を拒む理由がなくなるからだ。

 そもそも、要請への協力や入院の拒否が深刻と言えるほど多いわけではない。現下の感染拡大は、政府が一連のGoTo事業継続にこだわったことや補償規定の不備を放置してきた点が主な要因との見方が多い。

 共同通信の直近の世論調査では、菅義偉内閣の支持率が続落し、不支持が支持を初めて上回った。今回の緊急事態再宣言を「遅過ぎた」とみる人は79%、政府のコロナ対策を「評価しない」という人は68%に上った。

 菅首相は「専門家の意見」をコロナ対策の根拠としてきた。しかし旅行や飲食を喚起する事業の危うさと、医療体制の逼迫(ひっぱく)への懸念は早い段階から日本医師会などが示していた。それらを軽視した印象は否めない。

 特措法改正に当たり、政府は自らの責任を棚上げせず、正面から認めるべきだ。国会でも、それを踏まえた議論が必要だ。私たち国民が感染防止に引き続き協力することは当然として、何よりも今、問われているのは政府への信頼である。首相はそのことを肝に銘じるべきだ。

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