ウイルス減に1日1回「鼻うがい」 内科医が提唱、防御機能回復に期待

西日本新聞 くらし面 佐藤 弘

 通常のインフルエンザの場合、ウイルスが体内に侵入して1~2日で発症するのに対し、平均5日の潜伏期間があるとされる新型コロナウイルス。この間に主要な感染経路の一つ、鼻や喉に付着したウイルスを減らせれば、感染リスクも低減できるのでは-。そうした予防的観点から、食塩水と簡単な器具でウイルスを洗い流す「みんなで鼻うがいプロジェクト」を提唱しているのが、内科医の堀田修さん(63)。認定NPO法人「日本病巣疾患研究会」理事長を務める堀田さんに、その効果とやり方を聞いた。

 喉風邪や鼻風邪など、いわゆる風邪の原因の80%は、コロナウイルスとライノウイルスの感染によるとされる。新型コロナウイルスの場合も、症状や感染力に違いはあるにしても、感染経路は従来のコロナウイルスと変わらず、喉風邪の症状も同じように現れる。

 喉は、その部位によって鼻の奥の突き当たりにある上咽頭、口を開けた時に見える中咽頭、その下部の下咽頭に分かれる。特にウイルスや細菌が取り付きやすいのが、空気が滞留しやすく、内腔(ないくう)が細かい線毛でびっしり覆われた上咽頭。新型コロナのPCR検査をする際、上咽頭の粘膜に綿棒を当てて検体を採取するのは、そのためだ。

 この上咽頭と鼻腔(びくう)を、口腔(こうくう)内を洗うガラガラうがいのように食塩水などで直接洗うのが鼻うがい。付着したウイルスや細菌を洗い流すとともに、食塩水に含まれる塩素イオンから抗ウイルス作用がある次亜塩素酸が産生されるなどして、鼻や上咽頭が持つ防御機能を回復させる効果が期待できる。

 英エディンバラ大がウイルス性の風邪を発症してから48時間以内の患者を「食塩水で鼻うがいをした群」と「鼻うがいをしない群」に分けて調べた研究では、鼻うがい群の方が病気の期間が22%短く、家族への感染が35%少なかった。さらに新型ではないが、季節性コロナウイルスにかかった患者だけを見ると、鼻うがい群の方が、3~4日、風邪の治りが早かった。

 新型コロナに対する特効薬がまだ見つからない今、予防的な措置で家庭内の感染を防げれば、それは感染者増加による医療崩壊を防ぐことにもつながる。

 また鼻うがいには、花粉症などのアレルギー鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿(ちくのう)症)などでも症状が改善したという報告もある。(1)急性中耳炎(2)滲出(しんしゅつ)性中耳炎(3)声帯まひ(4)誤嚥(ごえん)を起こしやすい(5)膿性鼻汁が多い-などの症状のある人を除けば、1日1~2回の鼻うがいに副作用はない。

 病気は、治すより、かからないことが一番。家族、そして社会を救うため、人混みから帰ったら、手洗いに加え、鼻うがいも習慣付けてもらえるよう願う。

 ■自作できる洗浄器

 鼻うがいのやり方は、食塩水を鼻ですすり込んで洗う陰圧式と、ボトルを握るなど圧力で食塩水を押し出して洗う陽圧式がある。陽圧式専用の器具もあるが、市販のスポイトを加工してドレッシングポットにはめ込んで簡単に自作できる。

 【洗浄液】

 食塩水は、塩分濃度が高い方が効果が増すという報告もあるが、海水(3・4%)のように高すぎると刺激が増す。生理食塩水(0・9%)程度の濃度=水道水1リットルに対し食塩9グラム=から始めると痛みはない。さらに重曹0・5グラムを加えると爽快感が増す。温度は40度までの、いわゆる人肌程度で。手作りした食塩水は当日使い切ること。梅エキス成分を配合するなどした洗浄剤も市販されている。

 【陽圧鼻うがい】

 少し前かがみになり、スポイトの先端を片方の鼻の穴に差し込んでから、食塩水を入れた容器をぎゅっと握ると、圧力で押し出された食塩水が反対側の穴から自然に出てくる。

 この時、「エー」と声を出しながらやると、誤嚥を防ぎやすい。もし口に流れ出た食塩水を飲み込んでも大丈夫。胃酸でウイルスは死滅するから心配ない。

 (佐藤弘)

▼堀田修さん 1957年生まれ。IgA腎症の根治治療である扁摘(へんてき)パルス療法の第一人者で、多数の腎症患者の命を救った。著書に「ウイルスを寄せつけない! 痛くない鼻うがい」(KADOKAWA)など。仙台市の堀田修クリニック院長。

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