【動画あり】列車に乗って名湯はしご 大分の駅前温泉を巡る旅

西日本新聞 もっと九州面 中原 岳

♨混浴露天風呂にザブン!

 佐賀県・嬉野、長崎県・雲仙、鹿児島県・指宿…。九州の各地では、個性豊かな温泉が競い合うように湧き出ている。中には鉄道の駅前という一等地で楽しめる名湯も。今回は湯冷めに気を付け、列車に乗って大分県の「駅前温泉」をはしごする旅に出掛けた。

 JR博多駅から特急「ゆふいんの森1号」豊後森行きに乗った。名前の通り、主に由布院温泉(大分県由布市)に向かう観光客を乗せる特急だが、経由する久大線は由布院駅を含む豊後森-庄内間が昨年7月の豪雨で被災し、現在も不通が続く。そのため運行区間は豊後森駅までになっている。

博多発の特急「ゆふいんの森1号」で天ケ瀬駅に着いた

 列車は午前9時24分に博多駅を発車。平日とはいえ、同じ車両の乗客はわずか十数人だった。

 久留米駅から久大線に入った。筑後平野を駆け抜け、山あいに分け入っていく。大分県日田市の天ケ瀬駅に午前10時54分に到着。途中下車して駅舎を出た瞬間、温泉のにおいが鼻を突いた。

 通りの反対側に「駅前温泉」の看板があった。「混浴露天風呂で身も心もリラックス!」。えっ、混浴!? 戸惑いつつ、玖珠川のそばにある温泉に下りていった。

 浴槽にかかる屋根とコンクリート打ちっぱなしの脱衣場があるだけの簡素な造り。黄色い料金箱に100円を入れるだけで入浴できる。

 白く濁った湯には3人が漬かっていた。そのうち1人は隣の大分県玖珠町に住む高齢女性。「毎日入りに来ている。気持ちいいですよ」と上機嫌だった。

JR天ケ瀬駅前にある「駅前温泉」の看板。混浴露天風呂をうたう

 温泉は地元住民がつくる組合が管理している。2年ほど前まで十数年間、組合の責任者を務めた安永洋さん(78)によると、温泉の開業時期は不明だが、1959年8月から現在地にあるという。もともと「簗ケ瀬(やながせ)の湯」という名前だったが、安永さんが責任者の時に通称名の「駅前温泉」を取り入れた。

 昨年7月の豪雨では温泉が水没し、湯船には泥が堆積。600メートルほど上流の源泉から引くパイプが破損し、手すりも流された。

 「風呂場は台風が来れば、よく漬かっていたが、こんなに大きな被害は初めてだった」と安永さん。ただ屋根や柱は残り、風呂場の原型も残った。湯船の泥をかき出し、パイプを引き直し、手すりを取り付けた。被災から2カ月後、営業再開にこぎ着けた。人づてに復旧の話が伝わり、常連客も少しずつ戻ってきた。安永さんは「日常が戻ってきた」と実感したという。

玖珠川に面した駅前温泉。右奥には久大線の鉄橋が見える

 早速、湯船に入る。源泉掛け流し。70度の湯を引き、山の水や水道水で冷ましている。谷に沿って吹く風や川のせせらぎが心地よい。ガタンガタン…。近くの鉄橋を列車が渡り、到着を告げる天ケ瀬駅のベルの音もかすかに聞こえた。

 次第に客が増えてきた。関西から来た男性(79)は、青春18きっぷで九州を巡る旅の途中。「泉質がすごく良くて気持ちよかった。最初は熱いけど、慣れたら大丈夫」。福岡県嘉麻市の男性(64)は週に1度、訪れているといい、「天ケ瀬のいろんな温泉に入ったけれど、泉質はここが一番」と話していた。

 

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