「元慰安婦」判決 日韓合意の原点に回帰を

 日韓関係を一段と険悪にしかねない司法判断がまたもや韓国で出された。両国の政治家は歴史認識問題を巡る負の連鎖に歯止めをかけ、隣国関係の改善に向けて知恵を絞ってほしい。

 ソウルの地裁が日本政府に対し元従軍慰安婦の韓国人女性らへの賠償を命じた。国家には他国の裁判権は及ばないという国際法上の原則があり、焦点はこの「主権免除」の適用だった。

 判決は元慰安婦がかつての日本に「反人道的犯罪行為」の被害を受けたと認定し、主権免除は適用されないと判断した。

 国際的な慣例からも特異な判決であり、日本政府にとっては容認しがたい判決である。

 特に看過できないのは、日本が1965年の国交正常化で締結した請求権協定によりこの問題は「解決済み」との立場を取りながらも、人道的観点から積み重ねてきた取り組みを判決が評価していない点だ。

 日本は95年にアジア女性基金を設立し、元慰安婦に償い金を渡す枠組みを作り、首相の「おわびの手紙」も送った。2015年には両国政府が「最終的かつ不可逆的な解決」で合意し、日本側の資金で設けた財団を通じて存命の元慰安婦の7割超が現金を受け取っている。

 ところが文在寅(ムンジェイン)大統領は前政権が結んだ合意を「不十分」と否定してきた。「被害者中心主義」を掲げながら財団を一方的に解散し、解決に動こうともしない。無責任極まりない。

 元徴用工訴訟も同じ構造を抱える。18年の韓国最高裁判決が日本企業に賠償を命じたのを機に日本政府も事実上の報復措置を繰り出し、国交正常化以降で最悪の関係に陥ってしまった。いずれも文政権が国内を調整して解決策を示すのが筋である。

 日本側も「解決済み」の姿勢を強調するあまり韓国側の反発を招くような言動は控えたい。朝鮮半島を支配した歴史には謙虚であるべきだ。

 今回の訴訟に日本は「主権免除」を理由に参加せず、控訴もしない方針だ。判決が確定すれば日韓関係の改善は一層見通せなくなる。植民地時代に関わる問題がさらに司法の場に持ち込まれることも想定される。やはり政治が解決すべき問題だ。

 双方とも近年、歴史認識問題で妥協を許さない声が強まっている。今年はお互い重要な選挙を控え、決着を図りづらい環境とはいえ、これ以上、一連の問題を放置してはならない。

 歴史認識は立場によって異なり、問題解決が極めて難しい。それでも粘り強い交渉の末に実現した15年の日韓合意は貴重な外交成果である。両国の政治家はその精神にもう一度立ち返ることから始めるべきだ。

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