飯塚車いすテニス、2年連続中止 「イイヅカ方式」コロナが阻む 

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で2年連続の中止となった飯塚国際車いすテニス大会。延べ2千人の市民ボランティアが運営を支える「イイヅカ方式」が高く評価されてきたが、コロナ禍では安全な大会を開くための弱点となった側面もある。

 東京パラリンピックの前哨戦となる本大会。この1年、公式戦が次々に中止となって実戦の場を失った選手のため、事務局は無観客での開催を前提に昨年秋から動きだした。

 しかし、会議を進めるにつれて安全確保や資金面での数々の課題が見つかった。PCR検査費の相場は事務局調べで1回1万円。市民からの協賛金を中心とした運営費は例年約4千万円規模で、仮にボランティアを半減したとしても、大会期間中に全員を毎日検査することは現実的ではなかった。

 選手の感染が確認された場合、隔離施設が必要となるが、近隣でバリアフリー設備が整った宿泊施設は限られており、建物を借り上げる費用の壁もあった。運営全般を担う事務局は、数人のスタッフが中核。感染確認や濃厚接触者と認定された場合、自宅待機となり大会継続が困難となる。

 そもそもコロナ収束が見通せない中、例年通りに市民ボランティアが集まるのか、選手の送迎や荷物の運搬などを担う自衛隊の協力が得られるかも分からない。「検討すればするほど、安全を徹底的に確保する運営方法が見つからなかった」(事務局)。そこに変異種の出現や国内感染者の急増も重なり、今年の開催は断念せざるを得なかった。

 2年連続の中止で、今後はスタッフのノウハウの継承が課題となる。定期異動のある市職員や学生ボランティアを中心に、未経験者が多くなるためだ。前田恵理大会会長は「30年以上続いた大会だが、ゼロからのやり直しになる」。それでも「これを良い機会と捉えるしかない」と前を向く。事務局は、コロナ禍などの危機管理に対応したマニュアル作りやスタッフ養成に取り組みながら、選手や市民との再会の日を待つ。

(長美咲)

「今年こそと思っていた」

 飯塚国際車いすテニス大会の中止を受け、大会を支える関係者からは落胆の声が漏れた。同時に、新型コロナウイルスの感染が広がっている中での判断に理解を示す意見もあった。

 第2回大会から30回の出場経験がある今泉千春さん(64)=福岡市=は「今年こそは開催されると期待していた」と残念がった。特に今年はパラリンピック直前で「例年のパライヤーは海外の選手も増え白熱した戦いが見られる。大会や地域が一番盛り上がるタイミングではあったが、仕方がない」と語った。

 大会の代名詞である「イイヅカ方式」を担うボランティアからも中止を惜しむ声が相次いだ。

 会場で通訳を務めてきた筑豊SGGクラブの鈴木俊子さん(67)=福岡県直方市=は「通訳のメンバーは『少しでも役に立ちたい』と、語学の勉強を重ねて大会に臨んでいた。私たちにとっても大切な大会。昨年に続き、多くの選手や他のボランティアに会えないのが残念だ。コロナが収束し、来年は開催してほしい」。理学療法士として15回以上大会に携わっている植田順子さん(41)=みやこ町=は「医療従事者としては安全が一番。大会で感染が広がった場合のことを考えると、事務局の判断は正しかったと思う」と述べた。

 飯塚市の片峯誠市長は「2年連続の中止となり、大変残念だ。この大会は飯塚市にとってとても重要なイベントだが、感染状況、選手やボランティアなど多くの関係者の命と健康を踏まえた賢明な判断だと考える」とコメントした。

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