炭鉱電車“動態保存”で次代へ NPO法人理事長が届けたい思い

 「炭都三池の盛衰を見守ってきた炭鉱電車は大牟田の歴史をいまに伝える生き証人。地域の宝を動く状態で保存し、後世に伝えていきたい」-大牟田市と熊本県荒尾市で100年以上にわたって石炭や客車をけん引し、昨年5月に運行を終えた炭鉱電車。その動態保存に向けて活動するNPO法人「炭鉱電車保存会」理事長の藤原義弘さん(61)が力を込める。

 大牟田市吉野の出身で元中学校の社会科教諭。幼い頃から鉄道に興味を持ち、中学生から自宅前の鹿児島線を走る列車を撮り始めた。

 炭鉱電車はたまに見かける程度だったが、炭鉱を引く電車がどこから来て、どこに行くのか、高校の時に興味が湧き、旭町付近から自転車で線路沿いを走った。宮浦坑や宮原坑、万田坑(荒尾市)を通って、最後は三池港にたどり着いた。その時、客車を引いて走っていることも知った。人々の生活に溶け込んだ凸形の愛嬌(あいきょう)ある車体、美しく輝く赤い風貌、つり掛け式駆動の懐かしいモーター音や警笛音…「いつまで眺めても飽きない。すっかり虜(とりこ)になった」と振り返る。以来、写真を撮り続け、昨年は写真集を自費出版した。

 昨年5月7日、三井化学専用鉄道(旧三池炭鉱専用鉄道)は廃止になったが、炭鉱電車5台の“今後”は未定のまま。動態保存に向け、早速、両市民らで「炭鉱電車保存会」を立ち上げ、10月にはNPO法人化。旧駅舎を覆う草木の伐採作業や雑草取りなどに汗を流している。

 多くの人に炭鉱電車の魅力や思い出に触れてもらうため、会員たちが撮りためた自慢の写真を展示した「生きとる“炭鉱電車”を残したか!」を昨年11月に荒尾市で開催。大牟田市でも今月17日まで、ゆめタウン大牟田で開催中だ。世界遺産の宮原坑跡と万田坑跡に動態保存するよう両市長に求める要望書の提出に向け、署名活動も展開中で約千筆が集まっている。

 炭鉱電車には、長年にわたって整備してきた人、通勤通学に利用した人、日常の風景として暮らしてきた沿線住民など、さまざまな思いが宿っているという。「電車に込められた思いや誇り、培ってきた知識や技術など無形の価値も次代に届けたい」

 保存会員は現在、中学1年~80代の55人で、副理事長の1人は19歳の学生が務める。心強いのは中学生や高校生たちが熱心に取り組んでいることだ。「宮原坑と万田坑の間に線路を復元し、昔のように炭鉱電車を走らせるという保存会の夢を、この若者たちがきっと受け継いでくれると期待している」。柔和な顔がほころぶ。 (立山和久)

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