北朝鮮党大会 核依存で経済再建できぬ

 直面する経済難を核戦力増強で打開できると本当に考えているのだろうか。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記が掲げる新たな方針には懸念を抱かざるを得ない。

 朝鮮労働党大会が5年ぶりに開催され、正恩氏は「核戦争抑止力を強化し、最強の軍事力を備えることに全力を挙げる」と語った。米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイルの能力向上や核弾頭の小型軽量化を進め、極超音速滑空兵器などを開発すると主張した。

 この強硬路線への回帰は、北朝鮮が渇望していた米大統領との会談が実現しながら、大きな成果もなく決裂に終わった反動だろう。正恩氏はトランプ氏との首脳会談で「完全な非核化」への決意を表明したが、非核化の先行を要求され、期待した経済制裁緩和には至らなかった。

 米国で間もなく新政権が発足する。バイデン次期大統領はトランプ氏のような直接対話には応じない方針で、同盟国との連携を図りながら北朝鮮に核放棄を要求していくとみられる。

 正恩氏は党大会で米国を「最大の主敵」と位置付け「制圧、屈服させる」とも述べた。米国の政権移行期を狙って危機感をあおり、今後の交渉を有利に運びたいとの思惑が透ける。

 米国の出方を見極めるため、新型ミサイルの発射実験といった軍事挑発に乗り出す可能性もある。日本を含む近隣諸国の緊張を高めることになれば、国連などの制裁解除はますます遠のくと肝に銘じるべきだ。

 今回の党大会は国際社会の制裁と昨年の大水害、コロナ禍という「三重苦」の中で開催された。正恩氏は過去5年間の経済計画目標について「ほぼ全ての部門で著しく達成できなかった」と率直に認めた。厳しい現実は否定しようもないのだろう。

 北朝鮮は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で、ウイルス流入を防ぐため国境を完全封鎖したままだ。生命線である中国との貿易が激減し経済の苦境が一層深刻化しており、国民の窮状は想像に難くない。

 コロナ禍や経済制裁の長期化も覚悟しているとみられる。正恩氏が掲げたスローガンは「一心団結」「自力更生」など内向きの姿勢が際立つ。新たな経済計画も自給自足が柱だ。

 それは国民にこれまで以上の忍耐を強いるものになる。「国民生活の向上」に本気で取り組むのであれば、国際社会の支援を得ながら経済再建を目指すほかない。まずは核保有に固執する姿勢を改めるべきだ。

 今大会で正恩氏は総書記に就任した。祖父の金日成(キムイルソン)主席、父の金正日(キムジョンイル)氏と同じ肩書を得て威信を高めたいのだろうが、強硬路線では国の繁栄は築けない。自国の歴史から学ぶべきだ。

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