環境か経済か「馬毛島基地」争点に一騎打ち 鹿児島・西之表市長選

 鹿児島県西之表市の無人島・馬毛(まげ)島で昨年末、自衛隊基地の整備事業が動きだした。防衛省は基地を訓練施設として日米共同で使用する方針で、米軍は空母艦載機による離着陸訓練を行う計画。地元では基地整備による環境破壊、訓練による騒音への懸念が根強く、今月下旬に実施される市長選でも最大の争点に挙がる。

 昨年12月下旬、馬毛島の東12キロの種子島(西之表市)の中心商店街を街宣カーが行き交った。数日前には基地整備に必要な海底地盤のボーリング調査が始まったばかり。基地を「許容」とする候補予定者の後援会は「現実的な対応をしよう」とアピール。「反対」を唱える市民団体は3日後に控えた抗議集会への参加を呼び掛けた。人通りはまばら。ピークの1959年に3万3千人を超えた市の人口は1万5千人を割る。

 馬毛島は80年に無人となり、31年後の2011年、日米安全保障協議委員会が陸上空母離着陸訓練(FCLP)の候補地として共同文書に明記し、日本政府が島を買収した。防衛省の整備概要は、十字に交わる2本の滑走路を敷設し、風向きにかかわらず戦闘機の連続離着陸を可能とする内容。深夜にも及ぶFCLPは年最大2回で計20日、自衛隊機の離着陸訓練は年130日-の頻度で行う。日本周辺の東シナ海などで活動を活発化させる中国へのけん制もにらむ。

 4年前に基地反対を掲げて初当選した現職の八板俊輔氏(67)は、再選をうかがう今回も反対の立場。住民の平穏な生活が脅かされるとして「馬毛島に造る必然性があるのか」と疑問を呈する。

 地元漁協が同意したボーリング調査については一部の漁業者が「漁協全体の同意ではない」として、調査の差し止めなどを求めて提訴。馬毛島の元島民で原告の日高薫さん(72)は「基地整備で豊かな漁場が荒らされる」と訴える。防衛省は昨年12月21日に始めたボーリング調査を今年5月末までに37カ所で行う。

 だが、不安や反対ばかりではない。飲食店経営の男性(66)は周囲で基地容認の空気の広がりを感じるといい、男性自身も「反対を続けても地元は潤わない」と考える。むしろ恩恵への期待感が強いという。

 防衛省によると、基地運営に関わる自衛隊員150~200人が生活する宿舎は種子島に建設する計画で、一定の経済波及効果が期待される。自治体にとっても、現在は硫黄島(東京)で行われているFCLPの受け入れに伴って支給される米軍再編交付金は魅力だ。岸信夫防衛相は22年度予算に計上する方針を表明しており、防衛省は今後実施予定の環境影響評価(アセスメント)などに基づき、具体的な予算額や計上時期を決めるという。

     ◇

 今月24日告示、31日投開票の市長選には現在、基地に「反対」の現職八板氏と、「許容」を掲げる新人で市商工会長の福井清信氏(71)が立候補の意向を表明している。

調査許可の知事「賛否と無関係」

 馬毛島での基地整備には、幾つかの局面で塩田康一・鹿児島県知事の権限が及ぶ。沿岸部を埋め立てる場合の公有水面埋立法に基づく許可などがそれだ。知事はこれまで基地整備への賛否を明らかにしていない。ボーリング調査の許可については「行政手続き上の要件に照らして判断した」としており、賛否とは無関係だと説明する。

 住民の不安が大きい騒音について防衛省は、種子島と12キロ離れていることを理由に「限定的」との見解を示す。これに対し県は「地元の声をしっかり国に伝え、必要な説明を求めていく」と述べるにとどめている。 (片岡寛)

関連記事

鹿児島県の天気予報

PR

鹿児島 アクセスランキング

PR