みんなに助けられて気付いた【壱行の歌 認知症を描く】

若年性認知症当事者・福田人志さん寄稿(10)

 「かわいい。ラナンキュラスは鮮やかなオレンジ色だ」「ダリアは貫禄があるなあ」

 絵を描くことに夢中の私は、花屋さんでモデル探しをすることが増えました。花なんか興味もなかったのに、道端の名もなき花にもいとおしさを感じるようになりました。

 私は花を描いたはがきを持って病院へ行きました。1カ月前、私が感情を爆発させて「入院させてほしい」と泣きついた主治医による診察です。「プレゼントです」と渡すと、主治医は色鮮やかな絵を見てうなずき「よかった。もう大丈夫だね」。入院の話は立ち消えになりました。

 よし、もう一度だけチャレンジしたい。あんなに悔しい展示会は、もう繰り返さない-。そんな私の願いに、任意後見人の中倉美智子さんと、ボランティアのキヨカさんが快く応じてくれました。

 2015年10月、前と同じアルカスSASEBOで2回目の「壱行の歌」展を開きました。今度は絵も一緒です。

 真剣に見入っていた来場者に、私は思い切って声を掛けました。「今日はありがとうございます」。すると「福田さんにお会いしたいんですが」と。私はすかさず「はい、私が認知症の福田です」。

 言えた。言えました。今度は逃げなかった。心の中でガッツポーズをしました。

 こんなに簡単なことが、なぜ今まで言えなかったんだろう…。もしかして、私には認知症への偏見があったのかもしれません。認知症になってしまった私の話なんか、誰も聞いてくれないに決まっている-。そんな間違った考えに支配されていたのです。

 「またどこかで会えたらいいですね」と認知症の方に言われ、私も「せっかくのご縁、このまま終わらせたくない」と思いました。

 「ねえ、みんなが集まれる場所つくってよ」。またまた中倉さんに頼ってしまいました。

*****

 ふくだ・ひとし 1962年、山口県岩国市生まれ。2014年、51歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断される。15年に「認知症サポート壱行の会」設立。長崎県認知症疾患医療センターに相談員として勤務する傍ら、当事者による全国組織「日本認知症本人ワーキンググループ」理事として政策提言もしている。

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