“青春の思い出”木版画集に 田川市の元警察官伊藤さんが自費出版

 福岡県警の元警察官で、日本山岳会北九州支部顧問の伊藤久次郎さん(81)=田川市=が「木版画集 青春の想い出」を自費出版した。半世紀以上にわたり趣味で登った山々や、そこで見つけた花々、現地の人々の様子などを生き生きと力強いタッチで描いている。

 伊藤さんは同市伊田出身。大学卒業後に警察官となり、旧小倉署(現小倉北署)で先輩に誘われて登山部に入った。きつくつらい登り坂を経て、山頂に着いた時の快感のとりこになった。1976年には、小倉南署の同僚5人とヒマラヤ遠征を敢行。当時話題となり、「山男お巡りさん」として準備の様子を本紙が報道している。「上司はいい顔はしていませんでしたけどね」と笑う。

 登山の際に守ってきたルールがある。綿密に登山計画を立て、決して無理なルートや日程を組まないこと。もし遭難すれば、その地域の警察官に迷惑をかけることになる。それは同じ警察官として決してやってはならないことだからだ。

 全国や海外の数百の山々を登ってきた中で、一番好きな山は「香春岳」と即答する。中学1年の時に友人と初めて一ノ岳に登った際には山頂があった。ただ当時すでに山肌の一部は削り取られていて、「香春岳 惜しいところに はげがある」と謡われていた。「それでも美しく雄大でした。一ノ岳は特に。初恋の人が忘れられないようなもんです」と伊藤さん。

 登山だけでなく版画も趣味で、毎年、我流で年賀状を書いていた。86年に飯塚郵便局のコンクールで特選となったことから、本格的に習おうと「西日本文化サークル(現・麻生西日本新聞TNC文化サークル)」(飯塚市)の版画教室に入会。プロの講師らから構図や技法を学び、表現の幅を広げ、数十センチ四方の紙にも描ける力が付いた。

 画集のきっかけは父親の故・光さん。三井田川鉱業所の元従業員で、鉱業所が設立した「三井田川交響楽団」の指揮者でもあった光さんが80歳の時、生涯を扱ったテレビ番組が全国放映されたことにあやかり、伊藤さんも同じ傘寿の記念として、画集を出すことにし、昨年から準備を進めた。

 画集には国内外の山々など183点の版画を収め、表紙に選んだのは、中学時代に伊田からよく眺めた山頂のある香春岳。同鉱業所のものだった、市の象徴でもある「二本煙突」を添えた。

 現在は、同支部の高齢会員で編成する「ぽれぽれ会」(スワヒリ語で「ゆっくり」の意)に所属。昨年12月には、メンバー6人で宮地嶽神社(福津市)近くの宮地山と在自山に登った。伊藤さんは「無理せず登山を楽しみ、版画も続けたい」と前を向く。

 画集はA4判、93ページで300部制作、1部2500円(税込み)。 (吉川文敬)

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