菅首相の「説得」伝わるか 対コロナ、不信感拭えず正念場

 新型コロナウイルスの脅威にさらされ、緊急事態宣言下で迎える異例の通常国会に-。18日の施政方針演説で、菅義偉首相は「安心」と「希望」をキーワードに据え、感染拡大抑止と暮らしの立て直しを訴えた。コロナ対応でこれ以上の「後手」に回れば、政権の前途は視界不良になる。低支持率にあえぐ野党も存在意義を問われている。近づく衆院選も念頭に、国民注視の論戦の幕が上がった。

 「まずは『安心』を取り戻すため、新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させる」。午後2時、衆院本会議場。首相は静かに語り始めた。

 「私自身もこの闘いの最前線に立ち、難局を乗り越えていく決意だ」。時折、声のトーンを上げたものの、自身のスタイルである淡々とした語り口を通した。罰則や財政支援を盛り込む新型コロナ特別措置法改正案の提出に言及すると、野党席から「遅すぎる」とやじが飛んだ。

 演説を聞き終えた自民党のベテラン議員は「国民の不安を払拭(ふっしょく)しようとの覇気も危機感も感じなかった」と首をかしげた。「政権はじり貧、ギリギリの瀬戸際なんだけどな…」

 ウイルスが全国で猛威を振るうにつれ、日を追うごとに政権の体力が削られている。観光支援事業「Go To トラベル」の停止、緊急事態宣言の再発出のいずれも時機を逸したとの声や、政策判断が「朝令暮改」との批判も。発足時、70%前後あった内閣支持率は急落し、報道各社の世論調査は軒並み、不支持が支持を上回る。

 「首相への信頼が薄れ、言葉とメッセージが国民に響かなくなっている」。宣言という「カード」を切り、外出と人との接触を控えるよう訴えても人出があまり減らない現状に、政府関係者は頭を抱える。

 今国会の攻防線には「政治とカネ」もある。吉川貴盛元農相の汚職事件、安倍晋三前首相側による「桜を見る会」前日の夕食会費用補填(ほてん)問題。国民が政治不信を強める中、衆院議員の任期満了は10月に迫り、衆院選の足音を聞きながらの与野党攻防が激しさを増すのは必至。ある閣僚経験者は「首相がさらに追い込まれれば『選挙の顔にならない』となって、会期途中に『ポスト菅』の動きが急加速する」と話す。

 この日の演説で、首相が「私の信条」としてひときわ力を込めて紹介した言葉がある。

 「…国民に負担をお願いする政策も必要になる。その必要性を国民に説明し、理解してもらわなければならない-」

 長らくコロナと向き合い、緊急事態宣言で制約された暮らしを何とか営んできている国民に、もう一段の忍耐とその先にある希望を納得してもらえるか。25年前の衆院議員の初当選時、「政治の師」と仰ぐ故梶山静六元官房長官から授けられたという信条の強さを問われる国会論戦。首相にとって正念場となる。 (一ノ宮史成)

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