首相施政方針 「安心と希望」には程遠い

 通常国会がきのう召集され、菅義偉首相が初の施政方針演説をした。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言下の国会開幕である。首相は「私が一貫して追い求めてきたのは国民の皆さんの『安心』そして『希望』です」と力説してみせた。

 この首相の言葉に「なるほど」とうなずき、「その通りだ」と共感する国民が一体どれだけいるだろう。一連のコロナ対応には「後手で小出し」との厳しい世論がある。首相は率直に受け止め、感染の拡大防止と収束への展望を切り開くべきだ。

 首相は「国民の命と健康を守り抜く」と宣言し「感染症を一日も早く収束させる」とも約束した。具体的にどうするのか。飲食店の時短営業、テレワークの7割実施、不要不急の外出・移動の自粛、イベントの人数制限などを列挙するとともに、新型コロナに対応した現在の特別措置法を改正し、罰則や支援を規定すると表明した。特措法改正は与野党の枠を超えた喫緊の政治課題だ。国民的合意を踏まえて早急に実現してほしい。

 首相の演説で気になるのは、国民に対し「生活や仕事にご負担、ご苦労をおかけする中で今回、再び制約のある生活をお願いせざるを得ず、大変申し訳ない」とわびたことだ。

 国民は政府が緊急事態宣言を再び出したことに不信感を抱いているわけではない。むしろ、政府の決断が「遅きに失した」と不満を募らせているのではないか。先の観光支援事業「Go To トラベル」を巡る迷走や、自民党の要求で11カ国・地域とのビジネス往来を一時停止した判断はその象徴だろう。

 「未知のウイルス」との闘いである。対応に試行錯誤や朝令暮改が伴うのはやむを得ない面もある。問題は「何が判断を誤らせたか」を国民に丁寧に説明し、納得と合意を得て次の手を打つ謙虚な姿勢が見えないことだ。コロナ対策に国民の批判が強まり内閣支持率が急落しているのも、そのためではないか。

 「政治とカネ」の問題も見逃せない。さすがに首相も「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、官房長官時代に安倍晋三前首相を擁護し事実と異なる国会答弁をしたことは謝罪したが、吉川貴盛元農相が収賄罪で在宅起訴された事件など他の問題や疑惑については素通りだった。

 この姿勢は疑問だ。演説冒頭で「安心と希望」の社会実現を訴えた首相は演説の終盤で、国政を預かる政治家にとって「国民の皆さまの信頼が不可欠」と述べた。苦境に立つ今の首相にとってまさに至言だろう。

 有効なコロナ対策を実行するためにも、政府と国民を結ぶ信頼の回復こそ急ぐべきだ。

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