木の名札と深呼吸

 寒さが緩んだ朝、福岡城跡を拾い歩いた。梅園では5、6輪ほど紅梅が咲いていた。スイセンの一群は、香りを振りまくにはもう少し時間がかかりそうだ

▼近くの木の幹に表札のような板を見つけた。カラフルな文字で「クスノキ」とある。幼い子がペンをとっかえひっかえ書いたのか、どこか楽しげだ。ぐるりを見るとセンダン、ムクノキ、ホルトノキ…とあちこちにあった

▼管理事務所に聞くと、子ども向けに、木について学び、樹名板を付ける催しを毎年続けているとか。気にも留めなかった木が、名札のおかげで生き生きと見えるから不思議だ

▼近年の流行か、マンションや公園でも植栽の一本一本に名札が付いている。近所で観察してみた。シマトネリコ、ヤマボウシ、アラカシ、オリーブ…。明るくて爽やかな木が人気のようだ。一方、昔ながらの家にはモチノキ、マツ、ツゲ、カキやビワの木。昭和のラインアップに幼い頃の記憶がよみがえる。ヒイラギのとげは痛かったし、ハランはボール遊びに邪魔だった

▼木や花の名前を知らずとも、今どきはスマートフォンがある。花や葉にカメラをかざせば名前を教えてくれるのだ。便利だけど無粋な気もする

▼行ったり来たりの冬と春。三寒四温がしばらく続く。ずいぶん日も長くなってきた。気がめいる世事からひととき離れ、近場で芽吹きを探すのもいい。大きく深呼吸して、心に春を取り込もう。

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