所持金600円…「どん底」コロナで職失った33歳 奨学金返済も重く

 新型コロナウイルス禍で職を失い、生活に行き詰まる人が後を絶たない。解雇や雇い止めのほか、勤め先の業績悪化でやむなく離職する人もいる。福岡市の支援団体に昨年末、SOSを寄せた男性(33)もその1人。かつて助けられた奨学金の返済で苦しくなり、コロナ禍で職も失って、命を絶つことを考えていた。 

 5日、路上生活者などを支援するNPO法人「美野島めぐみの家」が拠点とする同市の美野島司牧センター。新年最初の炊き出しで、男性は白玉ぜんざいや筑前煮をほおばった。「人が作ってくれた食事はおいしい」。卵かけご飯やレトルト食品で耐えてきた体に、温かさと栄養がしみた。

 めぐみの家に駆け込んだのは年の瀬、誕生日の前日だった。「毎年、誕生日にいい思いはしてないけど、今年が一番ひどい」。コロナ禍で失職し、1カ月分の家賃2万5千円を滞納していた。所持金は600円。公的な貸付制度は過去の利用で返済が滞ったことがあり、審査に通らなかった。

 重荷だったのは奨学金の返済。高校と専門学校で建築を学び、5年間で計150万円を借りた。関東で大工やトラック運転手など職を転々とするうち返済が滞った。給料を差し押さえられ、当時の職場を辞めた。

 消費者金融から借り入れて完済したが、生活費が足りずヤミ金へ。実家も困窮して頼れず、借金は170万円まで膨らんだ。2年前に福岡県内に移住。運送会社で正社員になり希望が見えたが、コロナ禍の受注減で退職勧奨を受けた。複数の社員とチームで働く勤務体系で、チームの同僚全てが退社に応じたため、やむを得ず昨年9月に職を離れた。

 唯一の頼りの失業手当は、借金の支払いに充てるため手元にほぼ残らない。家に1人で閉じこもり、業者が夜も取り立てに来る。楽に死ねる方法を何度も探し、精神的に限界になった。弁護士に相談して自己破産の手続きを始めた頃、めぐみの家に助けを求めた。

 寒波が襲っても暖房は使わない。「耐えるしかない」。安定した職を望む一方、できる仕事なら何でもしたい。家族が集まれる家を自分の手で建てる夢もある。だが感染の急拡大からか、仕事は見つからない。「今がどん底。あとは上がるだけ」。自分を鼓舞する。

 昨年末。誕生日の翌日に、無料でWi-Fiが使えるコンビニに向かった。料金滞納で使えなくなった携帯電話がメッセージを受信し始める。「誕生日おめでとう」。母と妹からだった。近況を伝えると母から返信がきた。「苦しいけど、お互いがんばろう」

 厚生労働省によると、コロナ禍に関連した解雇や雇い止めは、見込みも含め累計8万人を超えた。他にも、職を失って追い詰められた人は多いとみられる。

 めぐみの家の瀬戸紀子理事長(76)は「行政の支援が広がったおかげで、炊き出し利用者はさほど増えてはいない」と話す一方、「今後を見通せない状況は変わらない」と警戒を緩めていない。 (小林稔子)

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