九州しょうゆ、甘さ「最強」は? 味比べとセンサー分析で導いてみた

 九州のしょうゆは甘いと言われる。では一番甘いしょうゆはどれか。醸造所が約240もあり、答えを出すのは難しそうだが、あえて挑戦することにした。関係者の皆さんによる推薦などで各県の“強豪”を選び、記者が味を比較。九州大と民間企業が共同開発した味覚センサーによる分析も依頼した。独自の決定戦。果たして九州一の栄冠に輝くのはどのしょうゆか。

 「しょうゆは南に行くほど甘くなる」とされる。南九州の宮崎では当初、「県南が甘い」との情報しか得られず、頭を悩ませていた。すると、日南市に出張した先輩記者から貴重な一報が。竹井醸造の「エンマン醤油(しょうゆ)乙姫様」が「日本一甘い」と言われているという。助かりました。

 熊本でも南で探すよう助言を受けた。ならばと、鹿児島と接する水俣市で調査。地元の人が「あれは甘いですよー」と教えてくれたのが、中屋醸造の「ナカビシしょうゆさしみ甘口」だった。

 最も南にある鹿児島。県醤油醸造協同組合の日高修専務理事ら複数の関係者は、いくつか候補を口にしながら最終的に藤安醸造(鹿児島市)の「ヒシク専醤(せんしょう)」を挙げてくれた。福岡でも「一番甘い」との評判を耳にしていたしょうゆだ。

 江戸時代に砂糖が輸入されていた長崎では、県醤油味噌(みそ)協同組合の職員が岩野上醤油醸造場(平戸市)の「キッコーイワさしみ醤油」に太鼓判。大分は、大分醤油協業組合の推薦でフンドーキン醤油(臼杵市)の「あまくちさしみ」をエントリー。全国で最も醸造所が多い福岡は、複数の関係者が老舗ジョーキュウ(福岡市)のしょうゆを挙げてくれた。

 記者の初任地・佐賀は、県味噌醤油醸造協同組合の職員が推薦してくれた中から、池田醤油醸造店(佐賀市)の「池田佐賀のえびすしょうゆ」を選出。ところが、会社に戻りふとラベルを見ると「醤油加工品」の文字が…。これはしょうゆベースの加工品に分類される。期待していたが、泣く泣くオブザーバー参加とさせていただいた(ごめんなさい)。

   *     *

 さあ、いよいよ甘さ比べだ。記者ら9人が水で口をすすぎながら、豆腐にかけたり、直接なめたりして順位をつける。1位=7点▽2位=6点▽3位=5点…と順位に応じて設定した点数を合算すると-。

 「びっくりするくらい甘い!」。こんな感想とともに最高点を獲得したのは、佐賀のえびすしょうゆだ。9人中6人が1位をつけた。ただ、今回はオブザーバー参加のため、参考記録とさせてもらった。

 次に点数が高かったのは…なんと、鹿児島の専醤と宮崎の乙姫様が互いに譲らず、同点で1位に。3位とは20点以上の差だ。やっぱり南九州は甘かった。

 感想を拾ってみる。記者の原稿をチェックするデスクは、乙姫様の特徴を「時間差攻撃」と表現。確かになめると後から甘みがぐっとくる。初めて体験する味わいだ。日南市で取材した先輩記者は「これが乙姫様に違いない」と銘柄をピタリ。1位の結果もうれしそう。

 専醤には「甘さがガツンとくる」「蜂蜜のような甘さ」のほかに「ふわっと羽衣のよう」という詩的な感想も。料理が得意そうな別の先輩記者は「みたらし団子」と表現した(ちなみに、乙姫様の感想は「鶏大根に合いそう」でした)。

 ほかの銘柄を巡っては、別のデスクが「同じくらい甘くて順位がつけられない」と言いながら何度も口に。「上品な甘口」「香りもいい」(ジョーキュウ)▽「これぞ九州という味」(ナカビシ)▽「優しい甘さ」(キッコーイワ)▽「さらっと甘い」(フンドーキン)などと、感想もさまざまだった。

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 味覚センサーによる分析を依頼したのは「味香り戦略研究所」(東京)。同社の装置は、九州大高等研究院の都甲潔特別主幹教授らがインテリジェントセンサーテクノロジー(神奈川県)と共同で研究を重ね、開発した。人の舌に近い測定が可能で、うま味▽苦味▽塩味▽酸味▽渋味▽甘味を数値化できるという。

 今回、甘味に関しては糖度計も併用。結果は7品の平均値を基準(ゼロ)にしたときの数値で比較した。それによると、甘味の数値が最も高かったのは専醤(1・23)。早坂浩史研究開発部長は「苦味やうま味、酸味、塩味の値も高く、味のボリュームがある中で甘さが突出し、余韻もしっかり残る。人の舌の感覚としては一番甘く感じられるのではないか」と評価した。

 意外だったのは、乙姫様の甘味の数値(マイナス0・02)が高くなかったこと。早坂部長は「分析結果で見ると、酸味が弱いため甘さを強く感じやすいのでは」と指摘。一方、うま味や苦味の値は高く「味のベースがしっかりしていて、複合的なこくや深みのある甘さだと推測できる」とした。

 ほかに、えびすしょうゆは、甘味は突出しているものの塩味やうま味は控えめで「シンプルな甘さが目立つ」。ナカビシは強めのうま味と甘味を兼ね備えつつ、柔らかな味。フンドーキン、ジョーキュウ、キッコーイワは甘味やうま味、塩味などのバランスが近く「似た甘さ」と推測した。

 関東出身で、甘いしょうゆはあまりなじみがなかったが、さまざまな甘さがある奥深さにびっくり。ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

 (黒田加那)

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