コロナ禍の阪神大震災26年 災害伝承阻む「壁」を越えて

新局面 災害の時代―後悔しない備え(31)

 年始から寒波や新型コロナウイルス第3波による緊急事態宣言、鹿児島県の諏訪之瀬島で噴火警戒レベルの上げ下げなど、落ち着かない状況が続いています。

 災害史を振り返ると、1月は正月のめでたい気分とは裏腹に安全な月ではなかったようです。17日の阪神淡路大震災(95年)以外にも、九州で12日に桜島大正噴火(1914年)、21日には筑豊の貝島大野浦炭鉱炭じん爆発事故(39年)が起きています。1920年の1月にはスペインかぜで国内死亡者が4万人に上りました。東日本大震災の犠牲者を超える規模です。

 年始を区切りに一休みして、その間は保存の利く正月料理で賄うといった知恵を持つ日本人にとって、1月は防災意識を新たにする好機だと考えます。とはいえ新型コロナの感染拡大で阪神淡路大震災の節目にまつわる報道が減り、風化が加速しそうで残念です。

 東京都健康安全研究センターによると、1918~21年に流行したスペインかぜの国内発症者数は2380万4673人、死者数38万8727人。一方、今月18日時点での新型コロナの国内感染者数(厚生労働省集計)は33万2231人、死者数は4547人です。

 スペインかぜ流行初年(18年)の都道府県別発症数は1位兵庫県3882人、2位新潟県2917人、3位北海道2533人、4位福岡県2490人、5位大阪府2394人、6位京都府2346人。関西圏が上位を占め、首都圏は入っていません。死亡者の年齢別では0~2歳が大きな比重を占めており、高齢者の犠牲が多い現代の新型コロナとは大きく異なります。

 個人的に気になるのは、現時点の新型コロナ感染者数が100人台と九州最少の大分県が、スペインかぜでは流行初期の18年10月に死亡者数756人と、県別で全国最多だった点です。

 台湾やベトナムでは新型コロナ防疫に過去の教訓が生かされたそうなので、大分県にも生きた教訓が伝わっているのではと考えたりしています。祖父母から「こんな防疫策を聞いた」という方は、ぜひ教えてください。

 大きな災禍が繰り返されていても、記録や教訓の伝承を阻む「壁」は、さまざまにあります。

 インドネシア・スマトラ島は1797年、1833年、1935年に地震津波に襲われました。当地に勢力を伸ばしていたオランダでは壊滅的な被害の記録が古書に残されていたのですが、スマトラ本島アチェでは長年の内戦や紛争、旧日本軍の侵略などで伝承されておらず、2004年の津波で大被害が出ました。

 阪神大震災で得た経験や記憶を未来に伝えようと兵庫県の学生が始めた、黄色い紙の花びらに応援の言葉を書いて贈る「フラワーメッセージプロジェクト」。私はインドネシアへの橋渡しをしました。私たちには「壁」を越え次世代へ伝えていく責任があるのです。 (九大准教授)

▼備えのポイント 災害史を学ぶ資料や著書として理科年表(国立天文台編 丸善出版)、日本震災史(北原糸子著 ちくま新書)、京都の災害をめぐる(橋本学監修 小さ子社)などをお薦めします。

 ◆九州大准教授  杉本めぐみ(すぎもと・めぐみ) 京都府生まれ。京都大大学院修了(地球環境学博士)。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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