原発事故への不安なお 唐津の住民「海が荒れたら助けは来ない」

12万都市の進路 唐津市長選・市議選(3)

 佐賀県唐津市最西端にある肥前町の星賀港から船で10分。周囲4キロの離島・向島(むくしま)はある。市民約50人が暮らす小さな島は、九州電力玄海原発(玄海町)の南西わずか6キロに位置する。

 「海が荒れたら島を出られん。助けにも来られんだろう」。島の区長、小山義久さん(66)は対岸に立つ玄海原発を眺め、事故時の不安を口にした。

 国の避難計画では、原発から放出された放射性物質から身を守る島内の専用施設に退避後、県や市が確保した船で本土に渡る手順となっている。だが、悪天候が重なれば船を出せない可能性があり、確実に避難できるかどうか分からない。

 さらに、施設は土砂災害の危険性がある「警戒区域」に位置するため、大地震などとの複合災害で使用できなくなった場合は家にとどまるしかなく、被ばくリスクは上がる。「最悪、安全な逃げ場がなくなる」と小山さん。施設に集まるだけの避難訓練にはあまり実効性を感じていない。

 新型コロナウイルス禍の今、避難と感染対策の両立に向けた備えも不可欠だ。しかし、施設で使う間仕切りなどはまだ市から配布されていない。「いつ届くか、連絡もないから分からん」と首をかしげる。

   ◇    ◇

 不安を抱えているのは島民だけではない。事故時に即時避難が必要な原発5キロ圏内に住む同市鎮西町の浅山常利さん(73)は、「住民が皆、無事に避難バスの集合場所までたどり着けるだろうか」と心配する。

 集合場所は市が地域ごとに指定しており、浅山さん宅からは直線距離で約430メートル離れている。ただ、坂道を通るなどして行く必要があり「高齢化が進む地域の実情と合っているとはいえない」。浅山さんの耳には「事故があればどうしようもない」という声も入る。迅速な避難に向けて集合場所を近くに増やすなど、避難計画の見直しを求めている。

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 東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故からまもなく10年。事故では広い範囲に影響が及び、立地自治体以外の居住者でも、今なお自宅に帰れない人がいる。

 玄海原発から約5キロ地点に住む同市肥前町の中山作十郎さん(65)は「ここも原発に近く、状況次第では人が住めなくなる」と指摘。ただ、市長選と市議選を巡っては今のところ原発に関する議論の深まりは感じられない。「避難を含めて課題は多い。今事故が起きたら、住民の安全はどこまで守られるのか」。中山さんは不安に思う。 

(津留恒星)

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