コロナ禍生き残り模索 商店主「努力し踏ん張るしかない」
12万都市の進路 唐津市長選・市議選(4)
「予約でいっぱいだったのに、1月に入ってキャンセルが止まらない。このままでは休業も考えないといけない」。佐賀県唐津市鎮西町で観光ホテル「大望閣」を営む古舘博さん(69)は悲鳴を上げた。
古舘さんによると新型コロナウイルス感染拡大に伴い、呼子、鎮西地区の宿泊施設では1月は前年の4分の1、2月は6分の1に客足が落ち込む見通しという。
昨年から新型コロナに振り回されてきた。大望閣は感染が拡大した4月下旬から6月いっぱい休業を余儀なくされた。「Go To トラベル」をはじめ国や市の観光支援事業で9月以降、ようやく上向きに。秋には、市特産の完全養殖のマサバ「Qサバ」を使った新商品「甘夏オイル漬け」を開発。全国ネットのテレビに取り上げられ、売り上げも伸びてきた。
それだけに、突然の暗転に古舘さんのショックは大きい。「コロナが収束しないと客は戻らない。今は耐えるしかない」。悲壮な決意を口にした。
宿泊施設の厳しさは市中心部でも同様だ。合併前の旧唐津市などの宿泊施設でつくる市旅館協同組合理事長の松下隆義さん(70)によると、加盟施設の今月の宿泊客は「前年の1割程度」。宴会も客が入らず、既に休業した施設もあるという。「このままでは2月以降も厳しいだろう」。悲観的な観測を漏らした。
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商店も苦境に立たされている。中心商店街は昨春以降、人通りが減り、買い物客でにぎわう夏場の「土曜夜市」が中止。唐津くんちも曳山(ひきやま)巡行が取りやめになり、書き入れ時を失った。
中心部の4商店街でつくる唐津中央商店街は昨年12月、国の支援事業「Go To 商店街」の採択を受けて中心部のイルミネーションを始めた。だが、感染の拡大でわずか4日でストップ。再開の時期や今後のイベントの見通しは不透明だ。「街ににぎわいを取り戻す起爆剤にしたかったが…」。中央商店街会長で手芸店を営む山下聡さん(58)は肩を落とす。
人出の増加に期待ができない中、山下さんが生き残り策として考えているのが通信販売だ。曳山をモチーフにした携帯ストラップを昨年から、ホームページ上で販売している。「自分たちで努力して踏ん張るしかない」。懸命に前を向く。
未曽有のコロナ禍にあえぐ産業をどう下支えし、疲弊する地域経済をどうやって活性化させるか。市政の舵取り役に重い課題が突き付けられている。 (野村創)
=おわり