脱トランプ矢継ぎ早 強行の一方、団結訴え 身内から政権に不満も

 【ワシントン田中伸幸】20日就任したバイデン米新大統領は早速、政策の「脱トランプ化」に乗り出した。地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の脱退やイスラム圏からの入国禁止は国内外から非難され、米国の威信を大きく傷つけた。これらの政策転換には一定の理解が得られるだろう。だが、トランプ前大統領の支持層からの反発は避けられず、民主党内からも異論が出始めている。国民融和による分断の解消を最優先課題に掲げるバイデン政権の本気度が問われている。

 20日朝、ホワイトハウスを遠くに望むワシントン市内には厳戒態勢下にもかかわらず、駆けつけた市民の姿があった。「4年間で米国をひどくしたトランプが本当に出て行くのか、この目で見たかった」(40代女性)。トランプ氏を乗せたヘリが飛び去ったことを確認すると、歓声が上がった。

 トランプ氏に対する国民の怒りを背景に、バイデン氏は就任演説で「修復すべきものなどやることが数多くある。速さと切迫感をもって前進する」と強調。ホワイトハウスに到着すると、1時間余りで報道陣の前に姿を現し、トランプ政権の決定を覆す大統領令などの書類に次々と署名した。

 21日以降もこうした動きは続く見通しだ。しかし環境規制強化によるコスト増、移民受け入れ拡大に伴う治安や雇用環境の悪化に反対するトランプ氏の支持者にとっては受け入れがたい政策ばかり。負けたとはいえ、トランプ氏は大統領選で現職大統領として歴代最多の7400万票以上を獲得しており「投票者の半数弱が支持したことを軽視するつもりか」といった批判が早くも飛び交う。

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 同様の不満は、行き過ぎた資本主義の是正や環境保護政策などを求める民主党左派の支持層にも広がる。就任初日の大胆な政策転換を「想像以上だ」(40代男性)と評価する声も一定数あったが、「どうせ中途半端に終わるだろう」と本気度を疑う空気が漂う。

 「現状から何も変わらない」と話したのは、小規模農家の支援強化を期待する中西部の農家アダムスキさん(65)。バイデン氏が次期農務長官に、オバマ政権時代に抜本改革に取り組まなかった長官を指名したことに失望したという。「大企業による寡占化で小規模農家が危機的な状況にある」と切実に訴える。

 温暖化対策に熱心なある若手支持者は、昨年の民主党大会で演説する機会を得たが、結局は党内主流の穏健派が作成した原稿を読むよう求められたという。

 バイデン氏は昨年の党内での大統領候補指名争いで左派候補を抑えて勝利。左派側に彼らの政策を政権公約に取り入れると約束し、大統領選での協力を取り付けた経緯がある。だがふたを開ければ、政権の主要ポストはバイデン氏と同じ穏健派が占める。敗者の意見に耳を傾ける寛容さや謙虚さを示さずに、団結や融和を求めるのは虫が良すぎるのではないか-。そんな不満がくすぶる。

 「意見の相違が分裂につながってはならないが、(私の)話を聞いても同意しないならそれで良い」。就任演説で国民の結束を繰り返し呼び掛けたバイデン氏だったが、別の一面ものぞかせた。

 バイデン政権が重要課題の一つに掲げる人種差別撲滅に注目する中西部の黒人女性ウェブさん(43)は期待も込めて「国民に団結を本当に求めるのなら、立場が違っても意見を聞こうとする姿勢が必要では」と注文を付けた。

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