核兵器禁止条約発効 核廃絶への道阻む保有国

 核兵器禁止条約が22日発効し、国際社会は「核なき世界」に向けて新たな一歩を踏み出した。ただ、核保有国は条約に参加せず、実効性は乏しいまま。米国では核軍縮に関心の高いバイデン政権が誕生したものの、不参加方針は変わらないとみられる。米国と対立を深める中国はむしろ軍備を増強。北朝鮮も核戦力の高度化を宣言するなど軍拡の動きは止まらず、核廃絶への道筋は見えない。

米国「条約現実的でない」

 条約発効に合わせ、米国内ではイベントが企画されたが、主要メディアは関連ニュースをほとんど報じなかった。市民活動家は「一般の人は条約の存在すら知らない」と嘆く。

 背景にあるのは厳しさを増す安全保障環境だ。ロシアや中国だけでなく、北朝鮮なども核開発に力を入れる。米政府関係者は「現実的でない条約に、米国が先に参加することはあり得ない」と一蹴する。

 オバマ元大統領は「核兵器なき世界」の理念を掲げたものの核禁止条約には否定的で、米国の核抑止力に依存する日本にも条約に参加しないよう圧力をかけたとされる。オバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏が条約参加に転じる可能性は低いとみられる。

 バイデン氏はイランとの新たな核交渉開始を模索するなど、トランプ前政権下の政策を覆しながら軍縮の道を探るとみられる。ロシアに加えて、軍事的脅威を増す中国に軍縮協議を働き掛けるとの観測もある。ただ、新型コロナウイルス対策が最優先課題だけに、核軍縮の取り組みがいつ本格化するかは不透明だ。 (ワシントン田中伸幸)

中国 米をけん制軍拡急ぐ

 ロシアと米国に次ぐ世界第3位の核弾頭保有国とされる中国は「自衛のための手段」として核武装を正当化。ミサイル開発を着々と進めている。

 中国外務省の華春瑩報道局長は22日の記者会見で「中国は一貫して核兵器の全面禁止と廃絶を提唱し、先制不使用を宣言してきた」と強調。その上で、核禁止条約について「核を持たない国々の核軍縮の願いは理解するが、世界の戦略的安定と各国の安全が損なわれないという原則に背いている」と述べ、参加しない方針を改めて示した。

 習近平指導部は、米国の軍拡が世界の安定を損ねていると指摘。米国主導の軍縮協議にも「中国の戦力増強を抑え込む狙いがある」として応じようとしない。

 むしろ「今世紀半ばまでに世界一流の軍隊をつくる」と宣言し、核兵器の増強に力を入れる。ストックホルム国際平和研究所の推計によると中国は約320発の核弾頭を保有。米国防総省は昨年9月に公表した報告書で、中国が200発台前半の核弾頭を保有し「今後10年で少なくとも倍増する」との見解を示した。

 中国外務省はこの日も「核兵器なき世界に向けてたゆまず努力する」と主張したが、その気配はない。 (北京・坂本信博)

北朝鮮 高度化宣言揺さぶり

 北朝鮮の最高指導者、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は今月の党大会で、射程1万5千キロ圏内の目標を正確に攻撃できる核戦力の保有を目指すと宣言した。念頭にあるのは米首都ワシントン。国際社会による対北朝鮮包囲網の再構築を探るバイデン政権を挑発した形だ。

 正恩氏は2018年6月、トランプ前米大統領と史上初の米朝首脳会談で非核化に合意したが、以降の米朝交渉は停滞。首脳間の直接交渉に否定的とみられるバイデン氏に揺さぶりを掛ける狙いもうかがえる。

 昨年10月の軍事パレードでは、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる大型ミサイルを公開。昨年11月には、北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載可能な潜水艦2隻の建造を進めているとメディアが報じた。SLBMは地上配備型に比べ、海中の潜水艦の発見が難しく、軍事的な脅威が高まることになる。

 北朝鮮は17年1月のトランプ政権発足から約3週間後に弾道ミサイルを発射。バイデン政権に対しても、交渉の主導権を握るために近く軍事挑発を再開するとの見方がある。 (ソウル池田郷)

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