赤字覚悟で「屋台の灯消さぬ」わずかな営業時間…福岡県時短要請1週間

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言により、福岡県内の飲食店に営業時間短縮の要請が出されて23日で1週間がたった。酒類を出せるのは午後7時まで。夜が稼ぎ時の居酒屋やバーは休まざるを得ない店が多い。博多名物の屋台も同じだが、赤字覚悟で営業を続ける店がある。屋台「中洲十番」の店主田中博臣さん(47)は「一日でも博多の屋台の灯を消さない」と誓う。

 福岡市博多区中洲、那珂川沿いの歩道は人通りもまばら。通常なら19軒の屋台が並ぶが、赤提灯が掛かるのは今、2軒のみだ。30歳の時、屋台で働き始め、4年前に市の公募で店を持った田中さんはつぶやく。「ここが福岡の名所とは信じられないですよね…」

 休業が多いのは屋台特有の営業ルールゆえ。市の条例で、公道を使えるのは午後5時から。他の飲食店のように開店を早められない。屋台の設置に30~40分かかり、時短要請に応じれば営業時間はわずかで、宅配もできない。

 田中さんにはそれでも営業を続ける理由がある。昨春の休業要請時、収入が途絶えた店主を支えようと、自身が中心となり、ネット上で寄付を募るクラウドファンディングを行った。約70人が賛同し、70万円超の寄付を申し出た。目標額には届かなかったが応援の言葉に励まされた。「屋台の明かりを消さないで」「福岡には欠かせないもの」。再びの緊急事態宣言に当時を思い返し、「今が気持ちに応えるとき」と決意した。

 客は少ない日で4人。食材ロスも多く、おでんの具材を大量に捨てた日は胸が痛かった。「商売できるレベルじゃない」が続けるつもりだ。20~30代の従業員3人は屋台経営を夢見て修業中。「同じ道を目指してくれたのがうれしい。苦しいときこそ『前のめりになるんだ』と背中で見せたい」

 23日午後7時すぎ、若いカップルがラーメンを食べ終え、帰り際に「頑張ってくださいね」と声を掛けた。田中さんはフライパンを動かしながら、静かに笑顔で応えた。 (井崎圭)

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