東京五輪まで半年、ワクチンは「魔法の水」か

 スポーツ医学が未熟な昔、ラグビーの試合によく「魔法の水」が登場した。やかんに入ったただの水だが、倒れた選手の頭にかけると、なぜかむっくりと起き上がりプレーに戻っていった

▼そんな水の魔法のような話を以前、バルセロナ五輪女子マラソン代表だった小鴨由水(こかもゆみ)さんから伺った。マラソンで最もきついのは30キロすぎ。酷使した肉体は限界寸前。そこで給水すると

▼「一口飲んだ瞬間、水分が手の指の先まで毛細血管を通じサーッと体内に満ちていくのが分かります」と小鴨さん。実感できず「二日酔いの朝に飲む水のような感じですか」と尋ね失笑された

▼小鴨さんが脱水症状でふらふらになってゴールしたバルセロナから29年。東京五輪開幕まで昨日で残り半年を切った。コロナ禍で1年延期が発表され10カ月たつが、事態は好転しない。直近の世論調査では8割が中止か再延期を求めた

▼ただ全てを五輪に懸けてきた選手や、震災復興を五輪に重ねる被災者を思うと万策を尽くし何とか開けないか。なのに菅義偉首相は「人類がコロナに打ち勝った証しに」と前政権と同じ空虚なフレーズを述べるだけ。無観客でも開催するのか。変異種発生国の選手も受け入れるのか。具体的な運営計画はおろか肝心のトップの覚悟が見えない

▼国はワクチンの一般接種を5月に始めるという。時期は遅いが、五輪開催への「魔法の水」になるよう祈るばかりだ。

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