なぜ?知らずに敗訴、差し押さえ 大分の女性、執行力排除求め提訴

 知らないうちに民事訴訟で訴えられて敗訴し、銀行預金を差し押さえられたとして、大分市で飲食店を営む女性が判決の執行力を排除する訴えを昨年10月、熊本簡易裁判所に起こしていたことが分かった。民事訴訟を起こすには、原告側が訴える相手の名前や住所を特定し、訴状に記載する必要がある。女性の代理人の弁護士が調べると、訴状には女性が住んだこともない住所が記載されていた。

 女性が異変に気付いたのは2020年9月。店名義と個人名義の通帳を記帳すると「サシオサエ」とあり、入出金できなくなっていた。銀行や裁判所などに問い合わせ、債権差し押さえ命令が出ていたことを知ったという。

 弁護士が訴訟記録などを調査。元従業員の男性が、30日以上前の予告なしに解雇されたとして19年6月、解雇予告手当金などを請求する訴訟を熊本簡裁に起こしていた。同8月、約68万円の支払いを命じる判決が言い渡された。口座からは約30万円が取り立てられていた。

 熊本簡裁は男性側が記載した住所に訴状を送ったが、いったんは届かずに戻ってきた。その後、男性側は「電気や水道のメーターが動いている」「飲食店は営業していない」などとする書類を提出。熊本簡裁はこれを受け、発送時点で届いたとみなせる「書留郵便に付する送達」で訴状を同じ住所に発送し、裁判は始まったという。

 女性は「男性側が記載した住所は自分と全く関係ない上、店も営業している。裁判所はよく調べて手続きを進めるべきではなかったのか」と訴える。

 女性が熊本簡裁に起こした訴えに関し、男性側は争う姿勢を示している。女性は昨年11月、精神的な苦痛を受けたとして男性に慰謝料などを求め、大分地裁に提訴もした。男性の代理人の弁護士は取材に「コメントすることはない」と述べた。熊本簡裁は現時点で手続き上の問題は確認されていないとし、「個別の事案には答えられない」とした。

 民事訴訟手続きに詳しい大坪和敏弁護士(東京)は「通常、原告側は裁判所の書記官から細かく調査を求められる」とした上で「原告が提出した書類の内容を裁判所自らが調査するのは、予算や人員面で現実的でない」と指摘する。一橋大大学院の山本和彦教授(民事訴訟法)は「より詳細な調査を原告に求めると、訴えを起こす権利を狭めることにもなる」と説明する。

 女性の代理人の弁護士は「この事例を広く共有して、再発防止策を模索する必要があるのではないか」と話している。

 (井中恵仁、松本紗菜子)

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