選択的夫婦別姓 多様な「家族」尊重したい

 夫婦が同じ姓にするか、別姓にするかを法的に選べる制度である「選択的夫婦別姓」を巡る議論が再び高まっている。女性の社会進出が一層進み、夫婦いずれかの姓を名乗る現行制度では不利益を被るとの訴えが顕著になっているからだ。

 家族観は時代とともに変化する。それぞれの夫婦や家族の事情に合わせ、姓を選択できることは基本的人権の尊重にかなう制度だと、私たちは考える。

 自民党は昨年12月、内閣府の第5次男女共同参画基本計画案について激しい議論を重ねた。「選択的夫婦別姓」の文言が入っていたためで、結局、文言自体を削除して内容を了承し、政府が閣議決定した。保守派議員が「伝統を重んじるべきだ」「家族の一体感が損なわれる」などと強く主張した結果だ。この騒動が別姓制度への関心を改めて高める契機ともなった。

 最高裁大法廷が、夫婦同姓は日本社会に定着しており、民法の規定は合憲との初判断を示したのは2015年である。ただその際、別姓に対する国民の理解が高まっていることから「国会で議論されるべき問題」とも付言していた。

 大法廷は近々、再び現行制度に関して合憲か否かの判断を示す方向とみられる。事実婚の夫婦3組が別姓の婚姻届を受理するよう自治体に求めた家事審判の特別抗告審の判断である。

 原告側は姓を変えることによるパスポートや預金通帳、登記簿の書き換えなどは想像以上に煩雑で、現行制度は違憲と訴えている。原告以外にも改姓による不利益を恐れ、婚姻届を出さず事実婚を選ぶ人々もいる。

 早稲田大などによる昨秋のインターネット調査によると、全国7千人の成人男女から得た回答のうち、約7割が選択的夫婦別姓を容認したという。

 法制審議会(法相諮問機関)が選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申したのは1996年のことだ。男女雇用機会均等法成立(85年)からも久しい。夫婦同姓は「夫は職場、妻は家庭」という旧来の価値観が土壌であるのは否定し難い。

 国会議員が「男女共同参画」を論じながら、姓の自己決定権を認めないというのは、時代に逆行すると言わざるを得ない。

 もちろん伝統を守ることの大切さや、家族は同姓であるべきだという考え方も尊重されるべきだ。子どもから見た場合、片方の親と違う姓であることに違和感を覚えるケースはあるかもしれない。

 だからこその「選択制」である。今や女性だけの問題ではない。コロナ禍で在宅の機会が増えた。家族の在り方を話し合ってみるのもいいだろう。

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