当事者や家族との集いが財産に【壱行の歌 認知症を描く】

若年性認知症当事者・福田人志さん寄稿(11)

 よりによって今日はとても冷えるね。誰か一人でも来てくれたらいいけど…。

 2016年1月、「カフェ峠の茶屋」を初めて開催しました。私たち認知症の当事者や家族、そして街の人たちが自由に集い、自由にお話をする場です。

 誰でもウエルカムな雰囲気で、バス停や駅からのアクセスが良く、トイレも休憩場所もあり、バリアフリーな建物。そんな条件を満たしたのが、展示会も開いたアルカスSASEBOです。任意後見人の中倉美智子さんが施設の了解を取り付けてくれました。

 雪という天気予報にもかかわらず、初回は十数人が参加してくれました。楽しみにしてくれていたんだと、感謝の気持ちでいっぱいになりました。うれしいスタートを切れました。

 以降、月1回開催するたびに参加者も増えていきました。認知症になって悲しかったこと、不安で胸が張り裂けそうなこと。そんな中にあっても、うれしかった体験。家族も一緒に泣いたり笑ったりします。そこでの会話が、私の財産のようになっていきました。

 ある日、私に会いたいという電話が自宅にかかってきました。佐世保中央病院認知症疾患医療センターからです。「またややこしい検査や注射でもされたらどうしよう。難しい話だったらついていけない」。頭を不安でいっぱいにしながら、中倉さんに付き添ってもらい、この病院のメモリークリニックを訪ねました。

 迎えてくれたのは井手芳彦センター長でした。満面の笑みと温かい人柄に、緊張がほぐれていきます。井手先生やスタッフと話をするうちに分かってきました。「そうか、ここは認知症の人にとって本山みたいなところなんだ」 

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 ふくだ・ひとし 1962年、山口県岩国市生まれ。2014年、51歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断される。15年に「認知症サポート壱行の会」設立。長崎県認知症疾患医療センターに相談員として勤務する傍ら、当事者による全国組織「日本認知症本人ワーキンググループ」理事として政策提言もしている。

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