「ワンヘルス」って何? 人と動物の共生へ福岡県が条例制定

 福岡県が昨年12月に独自に条例を定めて推進している「ワンヘルス」。新型コロナウイルス感染症など動物由来の病に関する問題を念頭に「人と動物の健康は一つ」と捉え、安全で安心できる社会づくりを目指す取り組みだ。30日にはオンライン方式で福岡発の国際フォーラムも開かれ、その意義を発信する。 

 福岡県が進める「ワンヘルス」の取り組みは、ウイルスや細菌などによる動物と人の「共通感染症対策」といった考え方にとどまらず、私たちの健康を巡るさまざまな課題を、人と動物、それらを取り巻く環境まで一体的に捉える「ワンヘルス=健康は一つ」との理念に基づき、解決しようとする試みだ。

 ワンヘルスに関しては、日本獣医師会と日本医師会が2013年に学術協定を結んだのを皮切りに、16年に北九州市で開いた国際会議で「人と動物の健康に向けて関係者が協力し、行動・実践する段階に進む」とうたう福岡宣言を採択。それを踏まえて福岡県議会は昨年12月、議員提案で全国でも例のない「ワンヘルス推進基本条例」を制定した。

 世界医師会会長も務めた日本医師会名誉会長の横倉義武氏と、日本獣医師会会長の蔵内勇夫氏が、ともに福岡県の出身でもあり連携を強めたことで、福岡発の取り組みとなった。

 条例が実践を目指す要点は六つ。医学的な観点からは、新型コロナウイルスなど動物由来の病原体による感染症の予防を含めた対策と、感染症の治療を妨げる薬剤耐性菌を広げない対策の強化に重点を置く。

 加えてこの条例のユニークな点は、残る四つの要点に象徴される。まずは環境保護活動を重視する点。自然環境と調和しない過剰な開発事業などが、人の健康を損なうウイルスなど微生物を宿す動物との接点を生み出したとする問題意識に立ち、保護活動の推進をうたう。

 次にペットをはじめ身近な動物は、人の心の健康づくりにも貢献する大切な存在と捉え、適切な飼育を進めるほか、イノシシなど野生動物との適正なすみ分けを含め、人と動物の共生社会づくりを明記する。

 それらと関連して、何らかの病気を患っていても、その人なりの生きがいが感じられる「主体的健康感」づくりの支援を提起。その上で環境と人と動物のより良い関係づくりには、地産地消を尊重した安全で安心な食を生み出す畜産をはじめ農林水産業が欠かせないと位置付け、食育や環境教育も含めて施策を求めている。

 こうした幅広いテーマを網羅した「福岡県のワンヘルス」の実践は、これからが本番だ。県獣医師会(草場治雄会長)は主体的に関わる方針で、その理念を分かりやすくまとめたガイドブック「ワンヘルス これまで これから」を作製した。希望者には先着順で100部を無料配布する。はがきで県獣医師会(〒810-0042 福岡市中央区赤坂1丁目4番29号)へ申し込みを。

 (特別編集委員・長谷川彰)

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