【動画】コロナと経済制裁、厳冬下の中朝ロ国境の街を訪ねて

 国境を見れば、その国の今が分かるという。中国東北部にロシア、北朝鮮と国境を接する小さな町がある。吉林省延辺朝鮮族自治州こんしゅん市。1月上旬に訪ねると、国際政治のしわ寄せや先の見えぬ新型コロナウイルス禍にほんろうされながら生きる人々の姿と、当局による厳しい監視の目があった。(琿春=中国東北部=で坂本信博)

 中国版新幹線「高速鉄道」の延伸ぶりはすさまじい。日本の新幹線は1964年の開業以来57年間で総延長約3千キロに達したが、中国では採算度外視で、昨年だけで約3千キロが新たに開通した。人口約25万人の琿春にも5年ほど前に路線が延びている。高速鉄道で現地に向かった。

 琿春駅に着く直前、車内放送が流れた。「車内と外の温度差にご注意ください」。気温は氷点下19度。ホームに降りて間もなく、視界のあちこちが丸く輝き出した。まつげが凍ったせいだった。駅舎の看板には中国語とハングル、ロシア語、英語の4言語が併記されている。北の国境地帯に来たことを実感した。

中国版新幹線「高速鉄道」も停車する琿春駅。駅舎の看板には、ハングル、中国語、英語、ロシア語の表記があった=1月上旬、吉林省延辺朝鮮族自治州琿春

 駅舎は巨大だが、駅前は閑散としている。建設中の高層マンションがコンクリートむき出しで林立しているものの、重機の音は聞こえない。工事が止まったままという。地元住民に尋ねると「完成しても買う人がいない。コロナ禍で市内のお店も半分ぐらいは閉店したまま。大学を卒業してもいい就職先がないから、若者がどんどん街から出ていく」とため息をついた。

 ■凍り付いた国境線

 駅から車で約1時間。北朝鮮との国境の川、図們江(豆満江)に着いた。鉄条網と頑丈なフェンスが二重に張り巡らされた先にある川は流れていない。凍り付いて、歩いて渡れそうだ。中朝国境をつなぐ橋があり、向こう岸に北朝鮮の税関施設が見えた。人影はなく、氷の川面を吹き渡る冷たい風の音がするだけだ。

中国と北朝鮮を結ぶ橋(右端)と北朝鮮の税関施設(左奥)。国境の川面は凍り付いていた=1月上旬、中国吉林省延辺朝鮮族自治州琿春

 「以前は税関施設前にトラックが行列して、隣の市場では中国各地からの観光客が安価な北朝鮮産の海産物を買いまくっていた」(地元住民)という。ただ、北朝鮮は昨年1月末から新型コロナ対策で入国を制限し、人とモノの往来は事実上途絶えていた。中国の税関当局によると、昨年11月の北朝鮮との貿易総額は約127万ドル(約1億3100万円)。前年同月の0・5%に激減した。

中国と北朝鮮の国境。北朝鮮が昨年1月から入国を制限し、人とモノの往来は事実上途絶えている=1月上旬、吉林省延辺朝鮮族自治州の琿春

 少し離れた場所にある中国とロシアの国境も閑散としていた。中国国営通信の新華社によると、昨年の正月休みには約1万人のロシア人観光客が琿春を訪れ、2千万元(約3億2千万円)の観光収入をもたらした。しかし今年は、ロシアでのコロナ流行で観光客の往来は止まっている。

中国とロシアの国境。新型コロナウイルス禍で観光客の往来はストップしている=1月上旬、吉林省延辺朝鮮族自治州琿春

 中ロ国境の税関近くにある土産物店にはロシアの民芸品や酒、食品が並ぶが、客は一人もいない。女性店主は「千人以上も観光客が来る日もあったのに、今は国境を往来するトラックの運転手が飲み物や菓子を買いに来るくらい。赤字で家賃が払えない」と嘆いた。隣の店は廃業していた。

ロシアとの国境にある税関そばの土産物店。両国の観光客が途絶え、現在はトラック運転手が飲み物や菓子を買いに来る程度という=1月上旬、吉林省延辺朝鮮族自治州琿春

 2019年は5%成長を達成したという琿春経済は、厳しく冷え込んでいた。

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