飲兵衛への道【光石研さん連載4】

連載:As time goes ばい!

 仕事が休みの日の夕方、なんとなくソワソワし始める。さて今日は何をおつまみにお酒を頂こうかしらと、思いを巡らす。

 一端の飲兵衛のごとく書いたが、実はお酒を覚えたのは40歳前後から。若い頃、お酒の呑(の)める大人に憧れ随分練習してみたりした。職業柄呑みの席も多く、頑張って呑んでみたものの大概真っ赤になり、ズキズキと頭痛に襲われダウンするパターンだった。

 父もほとんど呑めず、母に至っては、お猪口(ちょこ)のビールで倒れた人だ。ま、家系だから仕方ない、呑めなくても楽しい遊びはいっぱいあるもんね! と半ば諦めていた。しかし、当時の映画屋さんは厳しく、呑めない僕を捕まえて「お前さんは人生半分損してる! 全く遊びを分かってない! 役者はノムウツカウやで!」と打ち上げの居酒屋で絡まれた事があった。当時は仕事も少なく、将来への不安から悶々(もんもん)としていた時期だけに内心「あのね、貴方(あなた)がたとは遊び方が違うのさ!」と思っていた。

 37、38歳の頃からだろうか、なんとなく仕事が増えちょっとずつ忙しくなってきた。それに合わせて我が家の習慣も変わり、作品が終わる度に自宅打ち上げをするようになった。

 いつもよりちょっとだけ良いおかずで、それに合ったお酒をちょっとだけいただく。初めの頃はビールコップ1杯からだった。それがちょっとたつと、白ワイン2杯位呑めるようになっていった。

 あら不思議!ちゃんと食べながらだと呑める! ゆっくりゆっくり呑めば呑める! 量とペースを考えれば呑める!

 美味(おい)しいおつまみに美味しいお酒の味を知ってしまった。そして何より、その事が仕事のクールダウンになりリラックスに繋(つな)がって、次の作品への活力になっていった。

 そして40歳になった頃新しい俳優仲間ができ、今まで家呑みオンリーだった僕を居酒屋の世界へ誘ってくれた。「光石さん行きましょ」「え、でも俳優はノムウツカウやでって言うでしょ?」「そんな事言いませんよ」。さてその俳優とは-。 (みついし・けん=俳優。挿絵は渋谷直角さん)

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