『フラガール』炭鉱娘ダンサー蒼井優、衝突の先に咲くプロの笑顔

フクオカ☆シネマペディア(22)

 炭鉱閉山が相次ぐ1960年代半ば、常磐炭田の炭鉱マンの娘たちがフラダンスのダンサーになり、温泉レジャー施設「常磐ハワイアンセンター」(福島県いわき市、現・スパリゾートハワイアンズ)の開業を支えた。その実話に基づく劇映画「フラガール」(2006年、李相日監督)で、蒼井優(福岡県出身)がフラダンスのチームリーダーを演じている。

 蒼井演じる紀美子は炭鉱一家の娘で、高校に通う。父は炭鉱事故で死去。母千代(富司純子)、兄洋二朗(豊川悦司)は炭鉱で働く。炭鉱盛期なら卒業後、おのずと洗炭婦などとして働くのだろうが、炭鉱に未来は見えない。炭鉱会社は大量の人員整理を始める一方、ハワイアンセンターの開業を計画し、ダンサーを募集するのである。

 東京からやってきたダンスの先生、まどか(松雪泰子)は容姿端麗な元松竹歌劇団(SKD)ダンサー。華麗なダンスを間近に見た紀美子ら娘たちを引き込んでいく。同時に、炭じんにまみれて働き、炭住長屋の絆で支え合う炭鉱まちにあって、常夏ハワイのエンタメ文化と、まどかのドライな都会の流儀は人々との間に葛藤や摩擦、衝突を巻き起こす。

 例えば、高校を休み、指導を受ける紀美子に激怒した千代はレッスン場に乗り込み言い放つ。「ヤマの女は子ども産んで育てて、ヤマで働く亭主を支えるもんだ。へらへら笑いながら男衆にこびて、尻(けつ)振ったり足おっぴろげるもんでねえ」。まどかも負けずに、「あんたみたいな、おばさんばっかだから、いつまでたっても女は男より下に見られるのよ」と言い返す。

 フラダンス仲間の親友が、解雇された炭鉱マンの父らと北海道・夕張へ去る。紀美子はレッスンに身が入らない。「どんなときでも舞台では笑顔だ」とプロ意識を諭すまどかに、紀美子は「こったとき、ばかみてえに笑えるわけねえべ。よそ者の先生におれらの気持ちが分かってたまっか」と反抗し、びんたを食らうのだ。まどかは、舞台に立つ人間が笑顔をつくれないなんて許せない。

 こんな異文化の衝突が今どきの「分断」ではなく、お互いを見つめ合い相互理解へ向かうのがこの映画のすてきなところだ。

 まどかは、閉山含みの人員整理に見舞われる人々の苦悩とひたむきな奮闘ぶりが見えてくる。紀美子や千代たちは、中央の舞台を追われたまどかの傷心と親の借金を背負って苦労している秘密を知る。逆境にある者同士、心が響き合うのだ。開業初日の舞台へ多くの人々の思いが結集する。娘たちはぐんぐん成長する。

 俳優たちの表情が鮮明に思い浮かぶ。富司も松雪も、仁王立ちのたんかがすごい。素朴で友情に熱く、きかん気も含む娘を演じる蒼井は、振り幅の大きい多彩な表情を微妙なニュアンスも含んで、こちらの脳裏に刻印してくれた。

 開業日の本番で紀美子が優雅に舞い、つくる笑顔がとてもプロらしくて、まぶしく映って、忘れられない。 (吉田昭一郎)

※「フクオカ☆シネマペディア」は毎週月曜の正午に更新しています

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