コロナ下の春闘 雇用を守りつつ賃上げも

 今年の春闘がスタートした。新型コロナウイルスの感染が拡大する中で厳しい交渉になると見込まれるが、近年続く賃金引き上げの流れをここでとどめるわけにはいかない。雇用維持を優先しつつ処遇改善についても労使で知恵を絞ってほしい。

 政府の賃上げ要請を受けて経済界が協力する「官製春闘」がここ数年定着している。厚生労働省によると2014年以降、主要企業の賃上げ率は2%台を維持してきた。

 昨秋発足した菅義偉政権も前政権の路線を踏襲し、経済の好循環を進めるために賃上げの継続を求めている。

 今春闘の焦点はこれまでの勢いを継続できるかだ。昨年までと異なるのはコロナ禍で日本経済全体が打撃を受けていることである。20年度の国内総生産(GDP)は大幅なマイナス成長が確実だ。2度目の緊急事態宣言が出され、景気の先行き不透明感は一段と強まっている。

 実際、経営が厳しい企業は少なくない。インバウンド(訪日外国人客)需要の消滅や人の移動自粛の結果、航空、鉄道、観光、外食などで業績悪化した企業が目立つ。一時帰休や採用抑制といった取り組みも広がる。希望退職を昨年募集した上場企業はリーマン・ショック直後の09年以来の数に及んでいる。

 春闘をけん引してきた自動車業界は電動化や自動運転などの大変革に直面し、多くの労組が基本給を底上げするベースアップの要求を見送る方針だ。連合は2%程度のベアを含む4%程度の賃上げ目標を掲げたものの、足並みはそろっていない。

 経団連は、業績が振るわない企業のベアは困難とし、好業績ならベアも選択肢とした。確かに、かつてのような各社横並びの賃上げは現実的でない。存続の危機ともなれば、経営者が事業継続と雇用維持を最優先するのは当然だろう。他方、情報通信など業績好調な企業には積極的な賃上げを求めたい。

 日本では人件費を抑制し利益を捻出する経営が横行しているとの批判がある。これが企業の構造転換を遅らせ、収益力や成長力で欧米などに見劣りする要因になったとの指摘もある。

 日本の賃金水準が国際比較で低い現状には経団連の中西宏明会長も危機感を示し、賃上げの必要性では連合側と認識が一致している。長引く経済のデフレ基調から脱するためにも、賃金を引き上げ、内需を拡大し、生産性向上につなげるべきだ。

 今春闘はテレワークを含む働き方改革や、コロナ禍で不安定さが露呈した非正規労働者の待遇改善も大きな課題だ。誰もが安心して働き暮らせる社会の実現を労使で目指してほしい。

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