ピアノとドラムを兼ねた魅力 熊本出身のマリンバ奏者 ミカ・ストルツマンさん
熊本県天草市出身のマリンバ奏者、ミカ・ストルツマンさん=米国在住。夫はグラミー賞を2度受賞した世界的なクラリネット奏者のリチャード・ストルツマンさんです。2人は、31日の福岡市での公演を皮切りに、全国を回ります。来日したミカさんに、マリンバの魅力やコンサートへの思いなどをリモートで尋ねました。
-日本でのコンサートの意気込みは。
★ミカ この1年間、コンサートを開けなかったので、福岡のコンサートが、久しぶりにお客さまの前での演奏になります。感謝、感激ですね。福岡を訪れた後、2月下旬まで全国で計6公演あります。
-新型コロナウイルスの影響で、米国でも大変だったそうですね。
★ミカ ご存じのように、コロナで米国でもコンサートツアーが全部キャンセルになりました。それまでは年間50回くらいコンサートをしてたんですが。2回ほど無観客のコンサートがあっただけです。
-今の状況だと移動も苦労しますね。
★ミカ 早めに、昨年12月初旬に来日しました。その後にコロナで再び入国規制が厳しくなり、ぎりぎりのタイミングでした。今のところ国内のコンサートは予定通りとのことで、毎日練習しています。
-熊本県天草市の出身。音楽を志したきっかけは?
★ミカ まず、私の祖父母が琵琶や三味線を弾いているのを、ずっと聴いていたんです。叔母も天草でピアノ教室の先生をして生徒さんがたくさんいました。私もピアノを習い始めました。小学3年生で宮崎市に一時住んでいたとき、音楽の先生がユニークな授業をしていて、サックスを吹くなど教科書を使わない自由な音楽の世界に触れ、どっぷり音楽の良さを味わいました。天草に戻り、叔母からは「音楽を続けていれば、悲しみも取り除ける」と教えてもらいました。中学や高校では吹奏楽部で、打楽器を担当しました。
-マリンバに出合ったのは。
★ミカ 熊本音楽短大(現平成音楽大)に入学した18歳のとき、先生が演奏する華麗なマリンバを初めて聴きました。マリンバは、ピアノとドラムを掛け合わせたような楽器です。両方やってきたので、魅力的でした。
-米国に渡ったきっかけは?
★ミカ 40歳すぎくらいまで天草にいながら活動していたんですけど、教えるのは30歳くらいでやめて、後は演奏活動でした。34歳のときに1年間、トロント大(カナダ)に留学。その後、東京とニューヨークでデビューリサイタルを開きました。天草で音楽祭「アイランド・マジック」に3回携わった後、「もっと自分の音楽をやりたい」という思いがとどんどん膨らんで、2008年に米ニューヨークに移住しました。ジャズも勉強しました。その数年後に今の夫と結婚。現在はボストンで暮らしています。
-今後の音楽活動については。
★ミカ 今はマリンバが、クラシックでもジャズでもあまり認知されていない状況です。打楽器の世界でしか認められていない。マリンバは、できてから100年に満たない楽器。バッハもブラームスもマリンバを知らなかったのです。音楽の世界でマリンバの地位を高めたいと頑張っています。可能性を秘めた楽器だと思っています。
今のコロナ下でも、100%練習できるので問題はないんです。自分の音楽性をもっと高めたい、深めたい、というのが使命だと思っています。キャリアはそんなに求めなくてもいいので、マリンバで自分の音楽に挑戦していきたいです。
(文・根井輝雄)
▼ミカ・ストルツマン 1964年生まれ、熊本県天草市出身。天草で中学校の音楽講師などを務めた後、トロント大に留学。2000年に同大の上級演奏学科修了、東京と米ニューヨークでデビューリサイタルを開く。08年に米国移住。これまでに世界20カ国以上で公演し、計7枚のCDアルバムやライブDVDをリリースしている。