剣一筋「心」とともに 命燃やした白髪の名伯楽

 【評伝】入社1年目の1993年は、泉勝寿さんが率いた阿蘇高の女子剣道部が玉竜旗で連勝街道の真っただ中だった。強さの一端を知りたいと、冬のある日、熊本県阿蘇町(現阿蘇市)にある道場「剣泉館」に足を運んだ。聞き慣れなかった「驀直進前(ばくちょくしんぜん)」の部訓の意味を尋ねると「心次第でいかようにも変わる。邪心を捨てて初心を貫くんだよ」と教わった。防具を着け、白髪の鬼気迫る表情で部員の稽古台を務める姿と人懐こい笑顔が忘れられない。「持っていきなさい」と手渡された4文字の部訓が記された面タオルは宝物だ。

 自らを「精神論者」と言い続けた。礼儀や約束事をおろそかにすると、容赦なく雷を落とした。「叱られることで心が強くなる。その強さが土壇場でのせめぎ合いで生きる」からだ。だからといって、ほったらかしにせず、機を見計らって必ず「オイ!」と声を掛け、許した。容貌もあり「銀髪鬼」と呼ばれたカリスマ性は「父」の優しさに裏打ちされていた。

 日帰りで福岡に戻る予定が「泊まっていきなさい」との一言で変更。ぼたん鍋をたらふくごちそうになり、一緒に内牧温泉に漬かった。宿泊は道場の一室。こたつでうとうとしていると、部屋に掲げられた「君に告げる」という一文が目に留まった。「勝負は人間の意志によってはじまる。すべては精神状態によって決まる。必ずできるという信念をもつことだ」と記された文は、こう締めくくられている。「いずれ早晩、勝利を獲得する人は俺はできるんだと信じている人だ」-。

 真っすぐに命を燃やし続けた。剣一筋の「心」は、いつも火の国の剣士たちとともにあった。 (運動部長 西口憲一)

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