レシートデータ解析し野菜消費促進 購入促す言葉配信 農水省が実験

 低迷する野菜の消費量の拡大につなげようと、農林水産省は今春、消費者の購入レシートのビッグデータを解析し、野菜購買を促す情報発信のあり方を探るフィールド(実証)実験を始める。スマートフォンのアプリを通じ、約2500人分のレシートデータを収集。人の選択を望ましい方向に導くという行動経済学の「ナッジ理論」を使い、野菜をより積極的に食べてもらうための仕掛けを構築したい狙いだ。

 ナッジは、新型コロナウイルスの感染拡大防止の呼び掛けにも活用され、近年、注目を集めている。実験に取り組む同省農林水産政策研究所によると、レシートのデータに基づき、効果的なナッジを検証する実験は国内で初めてという。

 日本の野菜消費量は、食習慣の欧米化などを背景に約30年前から減少傾向が続く。成人1人当たり摂取量は1日平均280グラム(2018年)で、国が推奨する目標の1日350グラムを下回る。同省は、野菜摂取を呼び掛けるポスターなどで啓発を続けているものの、積極的な消費拡大には結び付いていないのが現状だ。

 実証実験は、スマホのアプリ運営会社と連携。家計管理に使われるレシート読み取りアプリを活用し、利用者がスマホで撮影したレシートから商品名や金額などの情報をデータ化して収集する。利用者約2500人を3グループに分け、グループごとにアンケートを配信し、野菜に関するさまざまな情報を伝える。

 ここで活用するのがナッジだ。例えば、A群には「野菜を食べましょう」と従来のポスターなどの啓発と同様の言葉を送付。B群にだけ「野菜を食べないと、健康を損ねる恐れがある」(損失回避)や「同年代と比べて、あなたは野菜摂取量が少ない」(社会比較)といったナッジに基づく言葉を送る。C群には特にメッセージを盛り込まない。

 こうして実験前の買い物状況も含め、計9カ月分のレシートデータを収集。グループごとに野菜14品目やサラダなどの購買行動の変化を比べ、ナッジの効果や持続期間を検証する。利用者には実験内容は伝えず、アプリの利用規約の範囲内で匿名のデータを活用する。調査対象を無作為に分けているため、集計データは野菜の価格変動などに左右されず、ナッジによる影響だけを分析できるという。

 同研究所の佐々木宏樹上席主任研究官は「レシートには膨大な情報が含まれており、野菜に限らず、肉や魚の消費量との関連も調べられる。有用なデータを得られれば、(野菜の購買意欲をより高める)消費者向けの政策にもナッジを生かしていきたい」と語った。 (山下真)

【ワードBOX】ナッジ

 行動経済学の理論で、人々が自ら選択できる自由を残しながら、強制的でなく望ましい方向へとそっと後押しする取り組み。直訳すると、「肘で軽く押す」という意味。2017年にノーベル経済学賞を受賞した米シカゴ大のリチャード・セイラー教授が提唱した。新型コロナウイルス対策では、レジに並ぶ人の密集を避けるため、整列用のテープを床に一定間隔で貼り付ける手法などで活用されている。

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