森林資源を「見える化」、AIが樹木の本数、種類を判定 九電など開発

 人工知能(AI)について考える企画「AIのある未来へ」。今年1回目のテーマは「AI×林業」だ。担い手不足が慢性化している林業を支えようと、AIで森林を「見える化」して資源を分析するサービスを九州電力(福岡市)などが始めた。最小限の人手で、この山にはどんな樹木が何本植わっていて、いつ伐採して出荷すればいいか分かる仕組みだ。防災面にも役立つという新システムについて担当者に聞いた。

 サービスを始めたのは九電と九電ビジネスソリューションズ(同)、九州林産(同)。

 現在の森林資源調査は基本的に人が行っている。対象の山に入り樹木の本数や種類、高さ、直径などを調べて回る。

 菊池「森林資源調査には多くの人手がかかり、労働環境もよくありません。傾斜地が多く下草も茂っているため危険が伴うのです。整備されていない放置林での調査も少なくなく、夏暑く冬寒い中での仕事になってしまいます。またすべての樹木をチェックするのは現実的ではないので、調査は対象地の一部にとどめ、得られたデータから全体を推測するサンプリング調査となっているのが現状です」

 森林資源の「見える化」はレーザースキャナーを積んだドローンを飛ばして行う。

 小崎「レーザースキャナーは照射したレーザーによって、対象物の空間位置情報を取得する計測機です。レーザー光が対象物に当たって返ってくる時間を測定し、それを距離に換算します。同時に対象物の3次元の座標値(x、y、z)を算出します」

 レーザー光には一定の方向にまっすぐ進む性質があり、樹木の枝葉をすり抜けるという。

 小崎「通常のカメラで森林を上空から撮影すると枝葉で隠れた地表の様子まで写りません。レーザースキャナーだと、葉が生い茂り落ち葉が積み重なった状態でも地表がどこか、判別できるのです」

 そうやって集まった一つ一つのデータを「点群データ」と呼ぶ。

 豊永「1平方メートル当たり約450の地点を計測しています。一つ一つの点には緯度(x)、経度(y)、標高(z)のデータが含まれています。これらの膨大な点群データを基にして、実際の地形を3次元でコンピューター上に再現することができるのです。対象の森林は標高が何メートルから何メートルの所にあり、斜度は場所によってどう違うか、林道はどこにあるかなど色分けしてコンピューターグラフィックスで表示できます」

 樹木も点群データで測量し、判別できる。

 小崎「1本の樹木のてっぺん、樹頂点が推定できます。それを数えれば本数が分かります。樹頂点から地表までを計測すれば木の高さになります」

 点群データは樹木の姿かたちも描き出す。

 小崎「AIのディープラーニング(深層学習)で、その木の直径の実寸や、まっすぐなのか曲がっているかが分かります。それによって出荷時期や木材の価格が見通せるのです」

 樹木の種類も判別できるという。

 豊永「国内の森林の大半を占めるスギとヒノキは木の上部、樹冠と呼ばれる部分の形に特徴があります。双方の樹冠を切り出して、スギかヒノキかを決定づけるデータ(特徴点)を用いて学習モデルをつくります。それをコンピューターに覚えさせることで、この木はスギ、この木はヒノキと瞬時に判別できるようになるのです」

 森林の全体像を把握するにはどの程度時間がかかるか。

 豊永「伐期を迎えた林齢約50年のスギやヒノキの森林では10ヘクタールに約7000本の樹木があります。撮影から2~3日で7000本のデータがそろうでしょう」

 システム開発の契機は?

 菊池「国が2019年4月、整備が行き届かず荒れた私有林を自治体が集約し、森林組合など意欲のある新業者に経営管理を委託できる『森林経営管理制度』が始まりました。森林所有者の負担が減り、森林資源の活用が活発になると思われます。そのためにも森林の価値がどれだけあるか把握することが大切で、今後、自治体の調査需要が高まると考え開発に取り組みました。『見える化』したデータを基に、所有者や自治体は今後森林をどうするか、採算性などを検討いただけると考えます」

 防災面にも役立つのか?

 菊池「荒廃した森林は、近年増加する土砂災害や洪水のリスクが高まるといわれています。このシステムで森林管理が促進され、放置林が減ることで災害防止につながると考えます」

 九州全土の約65%を占める森林。その重要性は産業だけでなく、国土保全の面でも普遍性を持つ。新しい時代の新しい発想が、森林の未来を守り続けるだろう。 (塩田芳久)

【出席者】

 菊池建次・九州電力テクニカルソリューション統括本部情報通信本部ICT事業推進2グループ課長

 小崎一彦・九電ビジネスソリューションズ技術推進室QBS-Lab長兼AIテクニカルセンター長

 豊永泰史・同QBS-Lab AIテクニカルセンター技術開発グループ長

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