おせっかいでも…地元で働く魅力を若者に

 大分放送(OBS)のリポーターを経て、大分大(大分市)の就職相談担当職員として働いていた岡野涼子さん(42)は、古里の大分県日田市で7年前に開かれたシンポジウムで発言した高校生の一言が今も忘れられない。「日田は好きだけど、何もない。だから働けない」。その言葉をきっかけに、地元で就労支援をしようとUターンを決意。都会への就職志向の若者たちを引き留めるため、あの手この手の戦略を繰り出す。

 志を同じくする仲間と、日田での新しい働き方を提案する団体「しごと学び舎」を6年前に設立。木工会社やレストラン、雑誌社など市内のさまざまな職場を訪ねる若者向け見学会や、学生と社会人が意見を交わすイベントを開くなど、「日田にも格好いい仕事はたくさんある」と懸命に訴えてきた。

 2017年には「NINAU(ニナウ)」と名称を変えて一般社団法人化。社会人講師を小中高校に派遣し、仕事のリアルを語ってもらう「おとな先生」と呼ばれる市の委託事業をメインに活動する。講師役は公募した約120人で、小鹿田焼の陶工、金融や自動車関連の会社員、救急救命士など職種はさまざまだ。

 講師には事前に「あなた個人として、なぜ仕事を続けているのかを語ってほしい」と伝えている。企業紹介ではなく、自分自身で考える魅力を伝えてもらうためだ。「児童・生徒たちはキラキラした目で食い入るように見ている。働く姿がイメージできている思う」と手応えを感じている。

 若者に地元での活躍を願うのは、大好きな日田を元気にしたいと願うからにほかならない。

 東京の大学時代、半世紀続いた同市亀山町にあった実家の米穀店が客の減少で廃業した。市内では他にもシャッターを下ろす店も目立ち始めていた。「歴史ある美しい街並みがある豆田町でさえ、なぜ廃れていくのか。真面目に働く人がなぜ悲しむことになるのか」。心の奥底で疑問と同時に、「何とかしたい」との気持ちも湧き上がった。

 一方で、帰省した際にアルバイトとして働いた豆田町の喫茶店「嶋屋」の店主で、日田の観光振興に力を注いだ石丸邦夫さん(17年死去、享年73)からは多くを学んだ。幼い頃から知り「おいちゃん」と呼ぶ親しい間柄。いつも「最後は人が大事ばい」と諭された。

 当時はぴんとこなかったが「人が育たないと文化は育たない。文化のない町に人は集まってこない」という町づくりの基本が、少し分かってきた気がする。だからこそ、町の未来を育てるように、若者を地元で育てようと強く思う。「おせっかいおばさんと思われるかもしれないけど、私も含め、社会には多種多様な価値観や働き方がある。そんな気付きを、これからも伝えていきたい」

 (中山雄介)

 メモ 結婚、出産を機に離職した岡野さんは、幼子を育てながら福岡まで講座に通い、就職や能力開発を支援するキャリアコンサルタントの資格を取得。「NINAU」の事務所はJR日田駅前にある。2019年にはイベント会社「ENTO(エント)」を設立。市がJRから借り受けた駅舎2階に宿泊もできるカフェを整備し、町づくりに向けた交流スペースとして運営している。

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「日田めいじん100選」 ヒタスタイルと共同企画

 西日本新聞は日田市の無料情報誌「ヒタスタイル」と共同で「日田めいじん100選」の企画に取り組んでいます。日田に住む、もしくは働く名人や達人など、その道の極め人の紹介です。本日発行のヒタスタイルにも同時掲載されています。ぜひご覧ください。

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