関釜裁判28年の歩み 福岡の夫婦、日韓で出版へ

 韓国の元従軍慰安婦や女子勤労挺身(ていしん)隊が日本政府に公式謝罪と損害賠償を求め、一審で初めて主張の一部を認めた「関釜裁判」。原告を長年支え続けた福岡市の花房俊雄さん(77)と妻恵美子さん(72)が、著書「関釜裁判がめざしたもの-韓国のおばあさんたちに寄り添って」を出版する。被害者の尊厳回復に向き合い続けた28年間の運動の記録。和解を望む日韓関係は対立したままだが、それが執筆への原動力となった。歴史認識を共有してもらいたいと、韓国でも出版する。

 「日本人はみんな鬼だと思っていた。どうしてこんなに優しくしてくれるのだろう…」。1992年、山口地裁下関支部に提訴した翌日、手料理を持ち寄った交流会で元慰安婦の一人がそう言って泣きだした。「ひょっとしたら、日本人との間に和解が可能なのではないか」。希望が、支援活動の原点になった。

 夫婦は福岡市内で自然食の料理店を営む。東北大で学生運動に関わっていた時に出会った。社会運動からは距離を置くようになり、福岡市で料理の道に進んだ。在日韓国人の教員採用問題などに携わるようになったのをきっかけに、裁判支援の依頼を引き受けた。

 「支援する会」の事務局を2人で担った。多い原告だと裁判などで20回ほど来日した。戦後も苦しみ続けたその思いを、支援者で受け止めて一緒に歌ったり、踊ったりした。高裁で逆転敗訴し、2003年に最高裁で敗訴が確定後も、毎年韓国へ渡り、原告たちを訪ね歩いた。10人の原告のうち、8人が既に亡くなった。

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 執筆に踏み切るきっかけは、関釜裁判を題材に2018年、韓国で上映された映画「ハーストーリー(彼女たちの歴史)」だった。

 挺身隊イコール慰安婦という間違った演出や、裁判支援を批判するヘイトスピーチ(憎悪表現)が当時あったかのように描かれていた。日本の戦後責任を求め苦闘してきた、弁護士や支援する会の活動が、十分に描かれていなかったのもショックだった。映画監督を福岡に招き、抗議もした。

 「被害者の痛みに対する無理解が日本側にあり、反発する韓国側が被害を強調しすぎる。相互に反発し合い、負のスパイラルに陥っているのが現状」。年齢を重ねる中で2人は運動を縮小せざるを得なかったが、「自分たちの活動を日韓の若い人たちに伝えたい」という思いを強めていた。

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 著書では、朝鮮人にだまされて連れ出された後、日本人に中国・上海まで連れて行かれ、旧日本軍の慰安婦として壮絶な経験をした原告の生々しい裁判でのやりとりも描かれている。

 夫婦は裁判が終わった後も、慰安婦問題の立法解決を求める全国的な運動の中心的な存在として携わり、政府に解決策を提言したこともある。その経緯も著書に盛り込んだ。

 執筆に当たり、資料を精査し、事実関係の確認に最も神経を使った。2人は「ハルモニ(おばあさん)に出会わなければ、むなしい人生だったかもしれない。戦争や植民地支配の被害と加害を語るとき、感情にとらわれ、必要以上に相手を刺激し合わないよう裏付けのある歴史認識を共有することが欠かせない。その一助となれば、うれしい」と話している。

 発行は白澤社で、5日から発売予定。価格は税込み2640円。韓国では3月にも出版される見込み。 (竹次稔)

 

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