ミャンマー政変 民主化を逆行させる暴挙

 ミャンマー国軍がクーデターを起こした。軍は1日、アウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら政府要人や与党・国民民主連盟(NLD)幹部を突然拘束し、テレビ放送で「国の実権を掌握した」と発表した。

 選挙で認められた政権を暴力で排除し、権力を奪うのは民主主義の否定だ。多くの困難を克服して前進してきたミャンマーの民主化を台無しにする暴挙であり、断じて容認できない。

 ミャンマーでは、軍が長年にわたって民主化指導者のスー・チー氏を軟禁状態に置き、独裁的権力を維持してきたが、欧米諸国の圧力もあり、2011年に民政に移管した。さらに15年の総選挙ではスー・チー氏率いるNLDが勝利し、実質的なスー・チー政権が発足した。

 しかし、軍政時代に制定された憲法の「国会議員の25%は軍人枠」などの規定によって、軍は一定の勢力を保っており、憲法改正を目指すスー・チー氏とせめぎ合いを演じていた。

 昨年11月の総選挙ではNLDが圧倒的勝利を収め、相変わらずの「スー・チー人気」を見せつけた。一方、国軍系政党は惨敗し、国民の軍への拒否感もあらわになっていた。

 今回、軍がクーデターを起こした動機は、総選挙で勝利したスー・チー氏がさらに軍の影響力排除に乗り出すのでは、との警戒感だったとみられる。選挙で示された国民世論とかけ離れた、自分勝手な論理である。

 軍の発表では、クーデターの理由を「昨年の総選挙で不正があった」と主張しているが、具体性に乏しい。海外からの選挙監視団体は、選挙は公平だったとの評価を示している。

 このままスー・チー氏らの拘束が続けば、民主化を支持してきた国民と軍との衝突が起きかねない。軍は一刻も早く拘束した人々を解放し、権力を正統な政権に返還すべきである。

 欧米諸国や国連は軍への批判の声を上げており、経済制裁の再開検討など圧力をかけていく構えだ。ただ、気になるのは中国の対応である。

 中国は民主化以前も欧米諸国とは一線を画し、軍政の後ろ盾となってきた。今回、軍がクーデターに踏み切った背景には、中国との関係は維持できるとの期待があるとみられる。中国抜きでは圧力の効果も半減する。国際社会は団結して軍に対し、民主的な体制を早期に回復するよう働き掛ける必要がある。

 日本政府は民主化勢力と軍の両方につながりを持つ。調整役を担う選択肢もあるが、「日本は軍に融和的」との誤解を与えてはならない。まずは「クーデターは決して認めない」との厳しい姿勢で臨むべきである。

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