片目失明は「障害」じゃないの?認定求める声

 「46歳、労災事故で片目を失明しました。しかし、片方の視力が良いと障害者にはなりません。就職の際、採用を拒否された経験もあります」(アルバイト・大橋雅夫さん=71=岐阜県可児市)「今年、片目失明の障害者認定の可否について動きがあるかもしれません。世間に知ってもらいたいです」(「片目失明者友の会」東海支部長・立岩秀隆さん=44=愛知県岡崎市)

 中日新聞の双方向報道「Your Scoop みんなの取材班」に片目失明者の問題を訴える投稿が2件、寄せられた。現状では片方の視力を失っても、もう一方に一定の視力があれば障害者とは見なされないが、自動車免許や就職で不利益を被ったり、心ない言葉を浴びたりすることもあるのだという。片目失明者の今を追った。

 

 大橋さんは鉄工所で仕事中、工作機械の刃物が折れて右目を直撃し、失明した。「特に遠近感がつかみにくかった」。慣れるまでは日々の暮らしにも苦心した。今でも死角の右側の扉にぶつかったり、自宅の階段を踏み外したりすることがあるという。

 外出には義眼が欠かせない。見えない右目は年齢を重ねるにつれて黒目が白濁し、位置のずれが大きくなった。10年前からコンタクトレンズ型の義眼を使っており、付け忘れて外出すると家に取りに帰る。「気持ち悪いと思われるかも」と不安になるからだ。

 「健常者と同じと言われても、現実は同じようには扱われない」。これまで何度も悔しい思いをしてきた。定年後、あるメーカーで再就職の面接を受けた際、「実は右目を失明している」と話したら、順調と思えた雰囲気が一変。面接官から「もういいです」と断られた。

 今のアルバイト先は面接で片目失明のことは言わなかった。仕事ぶりを知ってもらい、最近になって打ち明けたが、問題にはならなかった。

 「片目失明者友の会」(本部・広島市)のアンケート(回答者208人)では、6割が「学校や社会でいじめや差別を受けた」と回答。容姿をからかわれたり、就職面接で落とされたりといった不満が多い。20万円近い義眼の負担も大きく、義眼を使う62人のうち、定期的な交換ができているのはわずか10人だ。

 愛知、岐阜、三重、静岡4県の会員でつくる東海支部では、日頃の情報交換に加え、年1回、懇親会を開く。支部長の立岩さんは「家族にも話せない悩みを、同じ境遇の仲間同士で打ち明けられる」と“つながる”意味を説明する。

 立岩さんは3歳の時、事故で左目を失明。失明すると斜視になりやすく、「思春期は人と話すのが苦手だった。中には外に出るのが嫌になってしまう人もいる」と話す。

 身体障害者福祉法の規定によると、片目の視力を失っても、見える方が矯正視力0.6以下でなければ健常者と見なされる。友の会は2013年の結成以降、厚生労働省に対して「片目失明者を障害者認定してほしい」と要望してきた。認定されれば、就職での障害者枠の活用や義眼の負担軽減につながるという。

 厚労省は18~20年度の3年間、認定基準の調査を専門家の研究班に依頼。関東の片目失明者に聞き取りを実施、日常生活への影響度の分析を進めている。

 研究班を率いる千葉大医学研究院の山本修一教授(眼科学)は「外界の情報の8割以上は視覚から入る」と影響への理解を示す一方、「若くして失明した場合、対応できている人もいて個人によるばらつきが大きい。福祉の原資が税金である以上、合理的な基準は欠かせない」と説明する。

 21年度に報告書としてまとめる予定だが、新型コロナウイルス禍で聞き取りが停滞していることもあり、山本教授は「説得力のあるデータが出せるかどうか。継続研究になる可能性もある」と話す。立岩さんは「障害者認定の実現にはさらに時間がかかると思う。認定が難しくても、子どもや義眼の人など困っている人に補助が届くようになってほしい」と期待する。 (中日新聞・石井宏樹)

 ◆視野欠け遠近感に難 片目が見えない場合、個人差はあるが約30度、視野が欠け、遠近感もつかみにくい。運転免許の場合、大型や2種は片目では取得できず、普通免許も片目視力0.7以上、視野150度以上が条件となっている。「友の会」によると、片目失明者の人数は全国で10万人とも推定されるが、国も実数は把握できていない。厚労省の調査では「新聞の見出しは見えるか」「1人でお茶の準備ができるか」など生活への具体的な影響を聞き取り「障害」に当たるかの判断材料とする。

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