亀屋薬局60年の歴史に幕…沿道のひな飾り消え

 まち歩きしながら店々のひな飾りを楽しむ「ゆくはし商店街めぐりひな祭り展」(6日~3月21日)の参加店マップから今年、福岡県行橋市の行橋駅前通りの店が消えた。手作り「柳川まり」のさげもんで華やかに店を飾った亀屋薬局。昨年9月末に閉店、解体され空き地になっている。

 店主・銭場正治さん(73)の妻浩子さん(73)は17年前に始まった祭りの創設メンバーだ。きっかけは、浩子さんが健康のために習い始めた柳川まり作りだった。4年ほど教室に通った2002年から2回、作りためた作品を、ひな祭りに合わせて店に飾ってみた。

 これを見た元食料品店経営の寺本恵美子さん(故人)が感激して「みんなに見せよう」と提案。寺本さんや浩子さん、生活雑貨店の瀧秀子さん(72)を中心に創作好きの商業者らが「手づくり友の会」をつくって作品を持ち寄り、寺本さんの空き店舗で04年に開いた作品展が最初のひな祭り展だ。

 今では自分の教室を持つ浩子さんの作品数は軽く千点を超す。毎年、店に飾って祭りを支えてきたが「今年は自宅の押し入れや棚に眠ったまま」という。

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 約60年前、亀屋薬局(当初は行橋薬局)を開いたのは、正治さんの姉夫婦だった。水巻町にあった銭場家の亀屋薬局で働いていた義兄と、姉が結婚し、独立して行橋で店を構えた。

 義兄の木村重雄さん(94)は欧米好きで、車はフォルクスワーゲン(VW)、ペットはシェパード犬、店はアメリカ的な安売りドラッグストアの先駆けだった。カウンター越しに希望を聞いて薬を販売する対面方式が当然の時代に、買い物かごを置き、いち早くセルフ方式を取り入れた。

 02年、義兄の引退に伴い、長く一緒に働いた正治さんが経営を継いだ。大手ストアとの安売り競争は年々激化していた。そこでセルフ方式をやめ、対面式の専門薬局に戻した。正規販売店となった滋養強壮剤「キヨーレオピン」の売り上げが店を支えたという。

 だがまた、困難が降りかかってきた。道路拡幅事業だ。「後継ぎはおらず、この年齢で新たな投資はできない。いいタイミングだろう」と2人は50年近く勤めた薬局からの“卒業”を決めた。

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 元来は行好きの2人だが、夫婦で遠出したのは「若い頃、北海道に行った1回きり」と浩子さん。店を長く閉められないので、正月に近場に行く程度だった。だから「店をやめたら、2人でゆっくり旅行しよう。キャンピングカーもいいな、なんて話し合って、楽しみにしていた」という。ところが…。

 「旅行どころか、ずっと家の中ですよ」。会場を店舗から自宅に移し、張り切って準備していた週1回の柳川まり教室も、ずっと開けない状態だ。「新型コロナでぜーんぶ予定が狂った」。2人で元気に笑い飛ばすが、ねぎらいもできない卒業はやはり寂しい。「当面の目標? もちろん、コロナ禍が明けたら絶対に旅行に行きたい」と口をそろえた。 (石黒雅史)

 =随時掲載

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