ミャンマー政変に日本の官民苦慮 国軍と関係見直し

 ミャンマー国軍によるクーデターを受け、日本政府や企業が対応の見直しを迫られている。2011年の民政移管以降、日本は国軍側とも結びつく形でミャンマーへの経済支援や企業進出を進めてきたが、今回の政変で環境は急変。欧米の経済制裁が復活すれば、国軍は中国との関係強化に傾くとみられ、向き合い方に苦慮している。 (川合秀紀=バンコク、古川幸太郎)

 キリンホールディングスは5日、ミャンマーで展開するビール事業について、ミャンマー・エコノミック・ホールディングスとの合弁を早急に解消すると発表した。国軍は「軍財閥」とも称される巨大複合企業を支配下に置いており、同社も国軍系企業の一つだった。

 キリンは15年にミャンマーへ進出。ビール最大手のミャンマー・ブルワリーなど2社にキリンが51%、国軍系企業が49%をそれぞれ出資し、合弁事業を展開してきたが、近年は難しい局面に立たされていた。進出2年後の17年、イスラム教徒少数民族ロヒンギャに対する国軍の迫害問題が表面化したためだ。

 国連の調査団は19年、外資企業と国軍側との結びつきが「国軍の人権侵害に寄与する恐れが大きい」との報告書を公表し、キリンも名指しで批判した。「合弁事業の収益を軍事目的に使用しない」ことを契約条件にしていたキリンは昨年以降、たびたび国軍系企業側に収益の使途などの情報開示を求めたが、対応はつれないまま。今年1月には「残念ながら情報が十分に入手できない」との理由で調査終了を発表していた。

 今回、国軍が民主政権をひっくり返すクーデターの当事者となったことで、4月末までに提携関係について最終結論を出すとしていた期限を待たず、合弁解消の決断に踏み切った。国内外で反クーデター機運が高まる中、対応を急いだとみられる。

 ミャンマーの会員制交流サイト(SNS)では今回の発表を歓迎するとともに「国軍系と組む他の海外企業も後に続くべきだ」(現地人権団体)との声が広まっている。

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 最大都市ヤンゴン中心部で今年開業する総額370億円の大規模開発ビルも、クーデターの衝撃に揺れる。日本政府系のインフラファンド「海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」と政府系金融機関、大手ゼネコンなどの官民連合がオフィスや日系ホテル、商業施設を17年に着工し、建設は終盤を迎えているが、敷地は軍事博物館跡地。現地メディアなどは国軍所有地と指摘する。「高額な賃料が国軍に流れ、結果的に国軍を支援するビジネスは中止すべきだ」との批判が出る。

 JOINは「あくまで土地は(国軍を統括する)国防省からの賃貸と認識している」と事業の正当性を強調するが、憲法によると国防相は国軍が任命する上、国防予算は国の会計監査の対象外とされる。賃料の使途は不透明で、国軍に流れているとの疑念は拭えない。参画企業の関係者は取材に「クーデターは想定外。国軍との関係を含め、法令順守や倫理面を改めて関係先と協議しないといけない」と明かした。

 旧軍政時代から日本は国軍とのパイプを構築し、民主化を後押しするとしてきた。ミャンマーの開発問題に詳しいメコン・ウォッチ(東京)の木口由香事務局長は「リスク管理がずさんだったと言わざるを得ない。まずは政府が人道支援以外の公的資金拠出を停止し、国軍との関係を再考すべきだ」としている。

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