「ゼロ」絶対あきらめない「寛大と突っ走った」10年

【母ちゃん頑張るけんね❶ 高校生2人死亡、飲酒運転事故10年】

 おーい(^^) お空の隼人と寛大(かんた)へ。相変わらず仲良く笑ってるかな? 母さん達も元気だよ。歳をとらない二人の写真をお守りがわりに持ち歩き、突っ走った10年だったよ。いつも空から見守ってくれてありがとね(^^) これからも、飲酒運転ゼロを目指して頑張るね-

 ホームページに新しく作った「お空に声を届ける掲示板」。山本美也子さん(52)=福岡市東区=は1月下旬、「かんたママ」の名で、最初に投稿した。

 たくさんの書き込みが続いている。「君たちの想いが未来へ繋(つな)がるように、また自分に恥ずかしく無いように行動していきます!」「なかなかゼロにならなくて悔しいけど絶対に諦めんよ。2人の思いを絶対に無駄にせんからね!」

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 2011年2月9日。高校1年だった長男の寛大さんと同級生の皆越隼人さんは、飲酒運転の車にはねられ、命を落とした。

 加害者の姿を見た日のことが胸に焼き付いている。

 遺影を抱き、足を運んだ福岡地裁の刑事裁判。危険運転致死罪に問われた男性は法廷で「日頃から飲酒運転を繰り返していた」と話した。あの日も、会社の同僚たちと酒を飲んでいたのだという。叫びたかった。問いただしたかった。「周りでタクシーを呼んでくれる人はいなかったの。何で誰も止めてくれなかったの」と。

 9月16日。判決の日。6人の同級生が、高校を早退して来てくれた。懲役14年。皆、泣きながら聞いた。怒りの矛先をどこに向けたらいいのか、戸惑うように一人がぽつりと言った。

 「普通の人やったね」

 加害者だけを責める気にはならなかった。飲酒運転をどこかで許容しているような社会こそ、変えなきゃいけないんじゃないか-。

 その思いが、事故後まもなく始めた「飲酒運転ゼロ」への活動を貫いている。

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 昨年のお盆。自宅の片付けを始め、ふと思った。部屋に飾っているのは寛大さんの写真ばかり。「本当は、今ある命にも向き合わないといけないのにね」。次男や夫の写真も、一緒に並べてみた。遺品の整理も少しずつ。これまで手放せなかった洋服も。「こんなの、とっとかんよねえ」。そんな心の会話を、初めて楽しいと思えた。

 「少しずつできた新しい空間に、これからを生きるスペースを作った。毎日を幸せに」と、ブログにつづった。

 今年も2月が来た。この季節はやっぱり一番、つらい。それでも「母ちゃん、頑張るけんね」。事故から間もなく10年になる。

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