ロシア抗議デモ 弾圧やめ「声」に耳傾けよ

 ロシア全土でプーチン政権に対する不満が噴出している。プーチン大統領はかつてない規模の抗議デモを力で抑え込もうとしているが、参加者への弾圧を直ちにやめ、反発する国民の声に耳を傾けるべきである。

 デモの発端は反体制派指導者ナワリヌイ氏の逮捕だ。先月、療養先のドイツから帰国した直後、空港で拘束された。過去に受けた有罪判決の執行猶予中の出頭義務を怠ったためという。

 あくまでも形式的な理由にすぎず、明らかにプーチン氏の政敵に対する政治的弾圧を狙ったものだ。ナワリヌイ氏の釈放を求めるデモの参加者は従来の支持者以外にも広がる。政権は取り締まりを強化し、人権団体によれば先月23日に続く31日の抗議デモの拘束者は90都市以上で5千人超に上った。

 ナワリヌイ氏は政権批判の急先鋒(せんぽう)として知られる。昨夏に国内を航空機で移動中、意識不明の重体になった。ドイツで治療を受け、旧ソ連が化学兵器として開発した猛毒の神経剤が体内から検出された。国際社会から毒殺未遂と見なされ、ロシア特務機関の関与が疑われている。

 ナワリヌイ氏は逮捕後、執行猶予も取り消され、実刑となった。ロシアは9月に下院選を控え、反政権運動を封じ込める狙いだろう。重大な人権侵害でもあり、即刻釈放を求めたい。

 プーチン氏はこの20年余り最高権力者として君臨している。旧ソ連崩壊後の混乱を収拾し、原油高を追い風に経済の高成長を達成して支持を得てきた。半面、利益と権限を一極集中させる体制を確立したとの批判もある。昨年には2036年まで続投できるよう憲法改正を主導し法改正で退任後の刑事責任などの免責特権まで獲得している。

 今、厳寒の街頭に人々が繰り出すのはなぜか。クリミア併合に伴う欧米の経済制裁や原油収入減に新型コロナ禍が重なって経済は困窮し、国民の多くが生活苦を強いられているからだ。

 長期政権下で言論の自由が制約されており、そうした鬱積(うっせき)する不満にナワリヌイ氏陣営によってプーチン氏の「不正蓄財」として公開された豪華な宮殿の映像が火を付けた。

 プーチン政権に歯向かう人物に毒が盛られる事件は過去にも度々起こり、未解決のままだ。そうした恐怖を押してまで人々が公然と声を上げるのは、強権政治の閉塞(へいそく)感がもはや限界に達したと考えるべきだろう。

 この点をプーチン氏は直視し民主的統治を目指すべきだ。欧米も批判を強めている。関係が一段と冷え込めば制裁の長期化は必至で苦境は打開できず、プーチン氏が望む社会の安定はますます遠ざかるばかりだ。

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