ワクチン有効性とリスクどう判断 専門家に聞く

東京ウオッチ

 2月中にも国内接種が始まる新型コロナウイルスのワクチン。発症や重症化を予防できるとされ、医療機関の負担減や集団免疫の獲得が期待される一方、先行する欧米では少数ながら副反応のアナフィラキシー症状も報告されている。接種は無料で、受けるかどうかは個人の判断だ。どう考えたらいいのか、日本ワクチン学会理事長で福岡看護大の岡田賢司教授に聞いた。(久知邦)

 日本で最初に接種が始まるのは米ファイザー製のワクチンで、米疾病対策センターによると、1月18日までにアナフィラキシー症状が現れたのは、約994万回の接種で50回。米モデルナ製では約758万回で21回起きた。

 アナフィラキシーは急激なアレルギー反応で、血圧の低下や意識障害を起こすことがある。食べ物なども原因になるが、適切に処置すれば回復する。副反応に対応できる態勢を整えておけば、深刻な事態につながる恐れはない。

 米国のデータによれば、ファイザー製でアナフィラキシーが起きる確率は約20万回に1回。他のワクチンはおおむね100万回に1回とされ、それよりも確率は高い。一方で「効き目」である発症予防効果は95%とされる。インフルエンザワクチンが6割程度とされることを考えると、有効性は驚異的と言っていい。

 接種するかしないか―。岡田教授は「100%有効で、100%安全なワクチンはない。有効性と安全性、発症時のリスクを総合的に考え、個人で判断してもらうしかない」と話す。

日本ワクチン学会理事長で福岡看護大の岡田賢司教授

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 そうだとすれば、国民が正確な情報に基づき、冷静に判断できる状況にあるかどうかが重要になる。岡田教授の懸念も、その点にある。

 今回のワクチンの有効性はまだ国民に十分に伝わり切れていない。関西大の土田昭司教授(安全心理学)が昨年12月に18都道府県の男女2500人に行った調査によると、新型コロナのワクチンが「有効である」と回答した人は29%にとどまっている。

 似たような状況が過去にあった。2013年に定期接種が始まった子宮頸(けい)がんワクチンだ。

 当時、副反応が疑われる全身の痛みや運動障害など多様な症状を訴える人が相次いだ。報道が過熱し、厚生労働省は2カ月で接種の積極勧奨を中止。だがその後、多様な症状は接種歴がない人にも一定数現れることが分かり、因果関係は否定された。

 厚労省によると、このがんの死亡者は毎年約2800人。ワクチンを接種すれば5~7割が予防できるが、日本の接種率は1%(英国などは約8割)にとどまる。新型コロナでも正しい理解が進まなければ「同じことが起きかねない」と岡田教授は危惧する。

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 インターネット上では、新型コロナのワクチンの危険性を強調する書き込みも散見される。ノルウェー当局の発表によると、基礎疾患のある高齢者約30人がファイザー製を接種後に死亡。こうした情報が不安を広げている可能性もある。

 ただ、軽い副反応であっても、加齢や病気で弱った高齢者に「致命的な結果をもたらす可能性は排除できない」(ノルウェー当局)のは当然とも言える。岡田教授は「高齢者は毎日、さまざまな原因で亡くなっている。そうしたことも考慮し、冷静に受け止めることが大切だ」と言う。

 そこで重要になるのが政府の役割だ。まず先行する諸外国の副反応のデータや、国内で優先的に接種を受ける人たちのデータを開示すること。岡田教授は、政府は情報をガラス張りにした上で「安全性や有効性を丁寧に説明するべきだ」と訴える。

 国民が安心して接種するためには、長期的な有効性や安全性の監視も欠かせない。岡田教授は「予期せぬ重篤な副反応が出現した際、ワクチンとの因果関係を科学的に評価・研究する組織を整えておく必要がある」とも指摘する。

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