女性の自殺急増 命の支援網広げ連鎖断て

 長引く新型コロナウイルス禍が悲劇の連鎖を引き起こしている。政府はこの数字も重く受け止め、きめ細かな原因分析と対策の拡充に乗り出すべきだ。

 2020年の自殺者数(警察庁速報値)が2万919人に達し、前年を750人上回った。かつて年3万人を超えていた自殺者は19年までは10年連続で減少した。それが増加に転じた最大の要因は女性の苦境だ。

 自殺者は男性が前年比135人減の1万3943人だったのに対し、女性は同885人増の6976人だった。月単位でみると、女性は昨年6月以降、毎月前年を上回り、10月は20~50代を中心に前年の1・9倍の879人が命を絶っている。

 主な動機は、うつ病などの健康問題や夫婦不和といった家庭問題とみられている。ただ誘発要因として「コロナ禍がさまざまに影響した可能性がある」(厚生労働省)という。

 女性が多く就業する飲食業や観光業は感染拡大で大きな打撃を受け、解雇や雇い止めが相次いだ。生活不安や外出自粛によるストレスなどに起因する家庭内暴力も増えている。在宅勤務の広がりで女性の家事や育児の負担は増したとの声も多い。

 東京でコロナに感染して療養中だった女性の自殺が先月報じられた。「周囲に迷惑をかけた」という趣旨のメモがあったという。痛ましい出来事だ。

 一方、昨年(1~11月)の小中高校生の自殺は440人で、過去最多だった1986年(年間401人)を上回った。休校による学業の遅れ、友人関係の喪失、受験への不安などが要因として指摘されている。

 政府は企業への持続化給付金休業支援金、低利融資といったさまざまな緊急措置を進めているが、対応は追い付かず期間延長や増額を迫られている。各種相談窓口をはじめセーフティーネットが十分に行き届いているか早急に点検してほしい。

 学校現場ではスクールカウンセラーや「SOSの出し方」教育などを通じた自殺防止の取り組みをいま一度推進したい。

 コロナ禍は人と人の距離を遠ざけ、社会に閉塞(へいそく)感や孤立感を広げている。人同士の接触が減り、悩みを持つ人のSOSは察知されにくい状況にある。

 自殺は従来、男性が7割を占め、女性に特化した施策は重要課題とされてこなかった。それが盲点になったとも言える。対策全般を見詰め直すべきだ。

 菅義偉首相が折に触れて強調する「自助」には限界がある。命を守るには何よりも「公助」が欠かせない。地域社会の中で私たちが周囲の人々の苦境に目を向け、寄り添っていく「共助」の大切さも再認識したい。

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