「最後のご奉公」東京五輪目前、失言癖で退場

 女性蔑視発言の責任を取り、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任することが11日、確実となった。政界を引いた後は「最後のご奉公」として、東京大会に向け旗を振ってきた。国際オリンピック委員会(IOC)など海外と緊密なパイプを築き、新型コロナウイルス禍の中、大会を1年延期で着地させ、スポンサー企業との契約も取りまとめた。だが、首相当時から問題視されてきた失言癖により、開催まで5カ月余に迫った五輪への道筋を付けられないまま表舞台から去ることになる。 (下村ゆかり)

「開き直り」国内外から見放され

 森氏は4日の記者会見で、前日の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などの発言を撤回し、謝罪した。

 とはいえ、時間はわずか20分足らず。途中、記者団から「(自身は)会長職に適任か」と問われ、「さあ、あなたはどう思いますか」と挑発するように問い返す。さらに、「皆さんが邪魔だって言われれば、老害が粗大ごみになったのかもしれませんから。そしたら掃いてもらえばいいんじゃないですか」。最後は、「面白おかしくしたいから聞いてるんだろう」と不満げに声を荒らげた。

 国内外の世論には、誠意のこもった反省、謝罪とは映らなかった。「開き直り」そのものと受け取られた。

「総理歴1年でも20年分の影響力」

 2014年1月、森氏は組織委誕生と同時に会長に就任。元首相として国内外の人脈と調整力を駆使し、政財界、スポーツ界のベクトルを東京大会に結集させてきた。

 新型コロナ禍で20年夏の開催が非現実的になると、自民党細田派の後輩に当たる安倍晋三前首相とスクラムを組み、IOCのバッハ会長に延期の道を働き掛けた。組織委幹部は「森氏でなければ、1年延期は実現しなかっただろう」。自民の五輪相経験者も「1年しか総理をしていないのに、外交関係は20年分ぐらいの影響力がある」とその交渉手腕を評価する。

 がん治療や人工透析に耐えながら目指した、悲願の東京大会。今年1月末の本紙の単独インタビューで森氏は、「政治家を辞めて残った人生を、世の中のお役に立てればと思って無報酬でやっている」「アスリートが頑張って汗を流し努力してくるのを見て、みんな涙し、感動する。世界中のアスリートたちが素晴らしい活躍をすることが、五輪の成功だ」と思い入れを語った。しかし-。

難題山積、「立役者」自ら負の遺産 

 女性蔑視発言と謝罪の失敗は、自他ともに認める「余人をもって代えがたし」の安直なムードを吹き飛ばした。

 当初、森氏の謝罪にお墨付きを与えようとしていたIOCは9日、「完全に不適切」の声明を出して潮目を変えた。東京都の小池百合子知事も、近く予定されるバッハ会長らとの4者会談を欠席すると追い打ちを掛ける。五輪には国民の協力が不可欠だが、時を同じくして大会ボランティア、聖火リレーランナーの辞退者が相次いだ。トヨタをはじめ、多くのスポンサー企業トップが公然と非難した。森氏は自滅した。

 ウイルスの感染拡大抑止策、観客をどうするかなど、東京大会実現へクリアしなければならない難題は山積している。加えて国際社会に対し、自らの負の影響を払拭ふっしょくするという新たな荷物も残すことに-。ここまでの立役者の森氏にとり、皮肉な退場劇となった。

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