森会長辞任へ 五輪への信頼を取り戻せ

 事の重大さに対する認識を欠いたまま迷走を続け、表舞台から退場することになった。

 女性蔑視発言に対する批判が高まっていた東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長が辞任に追い込まれた。

 東京大会は今、新型コロナ禍の影響で開催自体に黄色信号が点滅し、組織委には難しいかじ取りが求められる。開幕5カ月前という時期のトップ交代で混乱も避けられまい。

 ただ今回の問題は、あらゆる差別を許さないという五輪の理念に関わるものだ。森氏の辞任は当然だろう。むしろ遅すぎたとさえ言える。

 問題の発言があったのは今月3日のことだ。森氏は謝罪会見を開き、組織委や政府は早々の幕引きを意図していたようだ。

 ところが国内外の反発は収まるどころか逆に強まった。ボランティアや聖火ランナーの辞退が相次ぎ、スポンサー企業からも批判が噴出した。謝罪会見による問題決着を容認していた国際オリンピック委員会(IOC)も「発言は完全に不適切」との声明を出し、流れが決した。

 ここで押さえておかねばならないのは、組織委の自浄作用の結果として、森氏が辞任を選択したとは言い難い点だ。

 森氏は当初、辞任を考えたが周囲が慰留したという。森氏だけでなく組織委や政府も時代に逆行した発言の深刻さを甘く見た。外圧に押されたかのような辞任劇は日本スポーツ界の閉鎖的で権威主義的な体質を浮き彫りにした。後任会長に一時、川淵三郎日本サッカー協会元会長が浮上した経緯も不透明だ。

 組織委はトップ交代を機に、組織の在り方や意識の改革に取り組まねばならない。とりわけジェンダー問題での改善策をまとめ、国内外に明確なメッセージを発する必要がある。それを世界が注視している。後任会長の選定については、女性や若手の起用も含めて透明性のある論議と手続きが不可欠だ。

 新会長が率いる組織委には、コロナ禍の下での安全な大会という課題がある。その前に、失われつつある国民の大会への共感と信頼を取り戻さねばならない。最新の世論調査では、五輪の「中止」「再延期」を求める人が計8割を超えている。

 こうした混乱時こそ、多くの人をまとめられる原点やそれに基づく行動が重要だ。改めて大会の基本コンセプト「多様性と調和」の具現化を考えたい。

 東日本大震災の後、世界から受けた支援に感謝し、復興をアピールする「復興五輪」も原点だったはずだ。そこに立ち返って後世に何を残すかを明確に示し、国内外の共感を得ることが再スタートの起点になる。

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