宣言解除よりワクチン 政府、医療界の反感回避

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出ている福岡など10都府県のうち、政府が一時検討していた一部地域の先行解除は12日、正式に見送られた。近く始まるワクチン接種を前に、協力が不可欠な医療界の意に反してまで解除を強行するのは得策でないとの判断。一方、3月7日の宣言期限を待たずとも、状況が改善した地域から解除していく方針に変わりはない。来週も専門家組織から意見を聞くもようだ。 (東京支社取材班)

 菅義偉首相は、この日夜に開いた新型コロナの政府対策本部会合で「効果の見え始めた対策を続ける」と話し、10都府県で宣言を継続すると表明した。

 一時期は、改正新型コロナ特別措置法などの13日施行に伴い、政府の対策指針となる「基本的対処方針」を変更する12日のタイミングで、一部の「宣言卒業」の可能性を探っていた。首相の指揮下、防疫対策が効果を発揮し事態が好転していることを、目に見える形で国民に示せるからだ。

 この風向きは9日を境に変わった。自民党のワクチン対策プロジェクトチームが首相と面会。体育館などでの集団ワクチン接種だけでなく、かかりつけ医でも受けられるよう見直しを求めたのだ。

 一方、同じ日にあった政府の感染症対策分科会では、医療関係者から「コロナ治療で精いっぱいで、ワクチンの態勢拡充まで手が回らない」との悲鳴が上がった。日本医師会の中川俊男会長は翌10日の記者会見で、政府に対し「冷静で大局的な判断をお願いしたい」。性急な宣言解除は、現場として容認できないとのメッセージを送った。

 医療従事者を皮切りに、高齢者までを優先接種するワクチンプロジェクトにはコロナ対応の成否が懸かる。「接種が始まる前に、医療界の反感を買うわけにはいかない」(政府関係者)との判断が官邸中枢で固まった。会見の後、中川氏は首相と会い、「使命感を持ってワクチン接種に全面的に協力する」と伝えた。

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 今週は動かなかったものの、来週も政府は引き続き宣言の「出口」を模索する。目安としては、ステージ4(爆発的感染拡大)を脱していることが必要条件となるが、10都府県のうち、神奈川県と岐阜県は既にステージ3(感染急増)以下となった。愛知県と京都府も、全項目でステージ3が目前に近づいている。

 福岡県の場合は、コロナ病床全体の使用率が70%前後と高い水準で推移しており、ステージ3の50%未満を達成するにはまだ少し時間を要しそうだ。9日時点の人口10万人当たりの療養者数も33人とステージ3の25人未満とは開きがある。

 西村康稔経済再生担当相は12日の参院議院運営委員会で、福岡県の宣言解除見通しに関し、療養者数や重症者が占める割合などを考慮して判断するとした上で「週単位で見ていくことが大事だ」と答弁した。

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