レクサス塗装技術で絶景描く、トヨタ九州の工長

 福岡県宮若市の清水寺周辺から見える絶景、雲海を描いた絵が、同市役所1階の多目的ホールに飾られている。作り上げたのはトヨタ自動車九州宮田工場で第2塗装課の工長を務める安東雄一さん(55)。描く際に生かしたのは、同工場で製造している高級車ブランド「レクサス」の塗装技術だった。

 縦約1・1メートル、横約1・6メートルのアルミ板に描かれている絵は、雲のにじみや空の色の濃淡まで細かく表現されている。昨年5月の新庁舎開庁に合わせ、市からの依頼を受けて制作した。

 安東さんは、以前勤めていた別の自動車会社の時から塗装を担当しており、約30年の熟練工だ。絵を習ったことはないが、日々培ってきた「勘とこつ」を働かせて描いている。

 初めて絵を描いたのは2014年。「手、空いてるでしょう。手伝って」。上司にこう言われ、宗像・沖ノ島と関連遺産群の世界遺産登録活動の一環として依頼された宗像、福津両市の市バスのラッピングを手掛けた。初めてにしては上出来。「会社はこれに味をしめたのかもしれない」と笑う。

 今回の制作では「車と同じ方法で塗装して価値を高めたい」と、レクサスを造る際の工程を重ねた。同社によると、レクサスの塗装では、最初にさびを防止する塗料の層をつくる。その後、発色を良くするために白や灰色の塗料を塗る「中塗り」という作業に入る。レクサス専用の色を塗ったら、傷が付きにくいように保護され、光沢が出るクリア塗装で仕上げる。

 雲海の絵を描くときは、まず市からもらった参考写真を見ながら鉛筆で下書きをした。塗装では、車を塗るときと同じように空気で塗料を吹き付けるスプレーガンを使用し、腕を水平に動かして塗っていく。うっすらと浮かぶ雲を描くときは塗料が出過ぎないよう、車を塗るときよりも空気圧を落とす必要があり「調節するのが難しかった」と振り返る。

 絵は仕事の合間や、少し早めに出社するなどして、下書きから含めて約30時間かけて完成させた。その出来は「100点満点ではないけど、まあまあよくできた。特別な経験ができた」とはにかむ。

 「この先も絵の依頼を引き受けられるよう、興味がある若い社員がいたら経験させたい」。あと数年たてば定年となる安東さんは、次世代の「絵描き」が現れることを期待している。 (丸田みずほ)

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