「香港に自由あれ」願う音色 デモテーマ演奏動画

 中国の統制強化に苦しむ香港市民を音楽で元気づけたい-。福岡市のトランペット奏者、飯野千春さん(63)が香港デモのテーマ曲「香港に栄光あれ」を演奏し、ユーチューブで動画を公開している。20代に香港で暮らした経験のある飯野さんは「当時の自由な雰囲気が失われている。つらい境遇にある人々の力になれれば」と思いを込めた。

1980年「すべてが魅力的だった」

 飯野さんは1980年、日立製作所に入社。83年4月から1年、研修のため香港で調達業務に携わった。「現地の業者は大事な取引相手でも言いたいことを言う。遠慮ばかりの日本の方が特殊だと思った」。当時25歳。自由で猥雑(わいざつ)な香港は全てが魅力的だった。

 あれから35年超。香港国家安全維持法(国安法)が施行された昨年6月末以降の香港にかつての自由さは感じられない。武装警察が市民を地面に組み伏せ、若者に催涙弾や放水を浴びせるニュースに胸が痛んだ。

 51歳で会社を辞めた飯野さんは音楽短期大学に入学し、トランペットを専攻。福岡でNPO法人をつくり、高齢者施設で演奏会を計約300回開いてきた。昨年12月、香港の民主活動家、周庭氏が実刑となったことを機に「自分もできる支援はないか」と考え、演奏動画の公開を思い付いた。

「政治活動は…」断られた伴奏

 香港在住の男性が作曲した「香港に栄光あれ」は2019年夏以降、自由や民主化を求める曲としてデモ参加者に広まった。しかし、香港政府は「強い政治的メッセージが含まれている」と問題視。国安法施行後、ほとんど歌われなくなった。

 飯野さんは自ら編曲し、トランペットなどで演奏。約4分の動画にまとめた。冒頭、日本語と英語で「香港の自由闊達(かったつ)な雰囲気が保たれ続けることを願ってやまない」と語り掛けた。

 ピアノ伴奏は最終的に知人の冨永真由美さんが引き受けたが、約10人から「政治活動は勘弁してほしい」と断られた。飯野さんも「中国に目を付けられないか不安はある」と明かす。それでも「自由にものが言えない社会は独裁につながる。意見を言い合って切磋琢磨(せっさたくま)することが中国の発展にもつながる」と訴えた。(川原田健雄)

 

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